クールで一途な後輩くんと同居してみた


 私の横を通り過ぎていくスイくん。


 大きな後ろ姿は、お母さんとは違う。


 お父さんとも違う。って、思いたいのに。


 意味……意味って……?


 寝ぼけてたときにした行動なのに、意味なんてあるの?


 どうしよう、わからない。


 でも考えないと。答えを出さないと。


 そうしないとまた、置いていかれちゃう。


 早く、早く――。



「大丈夫ですよ。最初から長期戦は覚悟してます」



 スイくんが立ち止まって、私を振り向いた。



「そうやって俺のことで頭をいっぱいにしてくれるだけで、今は十分です」



 ふわっ……。


 まだ少し眠いのか、とろんと下がったまぶたが優しい笑顔を作る。


 置いていかないで待ってくれてる。そんな気がした。


 スイくんは、私が立ち止まって動かないでいたら一緒になって隣にいてくれる、のかもしれない。


 そう考えた途端、なんだか胸が苦しくなる。


 自分にとって都合のいいだけの意味を、うっすらと頭に浮かべてしまった。


 ……わかってるよ。スイくんは、お父さんとは違うんだよ。


 でも、どうしても。


 触れた手の温もりが似ていて。


 かけてくれる言葉の端々から、私の理想としたお父さんの姿を見てしまうのだ。


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