クールで一途な後輩くんと同居してみた





 そんな日から、スイくんの目を見て話をするのが気まずくなった。


 朝のラジオ体操も放課後の部活体験も、いつもと同じように振る舞ってごまかし続ける日々。


 毎日楽しく過ごしたいだけだったのに、自分で自分の首を絞めているだけ。


 スイくんが知りたいと思ってる私のことを、全然教えられていないのが心苦しくて。


 どうするのがいいのか、自分で考えなくちゃいけないのが嫌だった。


 これが、今まで考えないように蓋を閉じてた罰なんだろうな……。



「緋織、ん」



 トン、机に置かれたのは紙パックのココア。


 顔を上げれば、朝練を終えた大ちゃんが同じものを飲みながらそこにいた。



「あ、ありがと? えっと、なんで?」

「たまたま当たったから」

「あ、そうなんだっ……」



 なんて下手な嘘の吐き方だろう。


 あの自販機、当たりなんて付いてない。



「大ちゃん……もしかして私、態度に出てる?」



 ストローからココアを一口。


 甘いなぁ……。



「ちょっとだけな」

「スイくんにもバレてるかな」

「さぁ。でもいつもみたく時間が経てば戻る、だろ?」



 ちょっと調子が悪いだけ。


 その通りではあって、定期的にそういう時期が来るのは大ちゃんに知られている。


 誰にでもある、気分の波。


 ただ、知らないふりをし続けるわけにはいかないと思った。


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