クールで一途な後輩くんと同居してみた
「あのね大ちゃん……時間じゃ無理かもしれないの」
「マジか」
「スイくんと過ごせば過ごすほど……お父さんのこと、思い出しちゃう」
「それは困ったな」
「うん……」
こういう時期は、決まってお父さんへの気持ちが強くなるほど訪れる。
お盆とか、命日とかね。
だけど今回は、スイくんを通してお父さんを見てるから。
スイくんと一緒にいる限り続くのかもしれない。
隠しきれないところまで来ている。
スイくんが慕ってくれている緋織は、こんなんじゃないのに。
「スイくんの前では、先輩らしくありたいよ……」
ぽつり、弱音をこぼす。
小さい頃から一緒にいる大ちゃんにしか言えない。
本当は、こんな風に甘えたくもないけど。
「あー……まぁ、四宮くんに隠すのはやめといたら? たぶんさ、緋織の明るい面が好き、とかじゃないよ、あいつ」
「そんなこと、あるかなぁ」
「いやいや。見えてなさすぎ。絶対何言っても受け入れるぞ」
「スイくんにめんどくさいのバレたくないんだよ……?」
「いけるって、大丈夫大丈夫」
大ちゃんの励ましは、いつだって根拠が見えない。
でも間違ったことは言わない人だ。
「……頑張って、みようかな」
「おー、頑張れ!」
肩を軽く叩かれる。
ニカッと歯を見せて笑う大ちゃんの姿は、昔から変わってない。
変わらないのに、自然と私の前を歩いてる気がするんだ……。