クールで一途な後輩くんと同居してみた


 放課後、部活体験隊の時間。


 そろそろ期限が迫ってきてるけど、良いところは見つかったのかな。


 教室まで迎えに来てくれたスイくんは、開口一番こう告げる。



「緋織先輩、今日は行きたいところがあるんです」

「えっ、ほんと!?」



 スイくんから行きたいって言ってくれるのは初めてだ。


 どこにするんだろう。



「文芸部です」



 ギシ、ってどこかの骨が軋んだ気がした。


 文学に興味、あったんだ。


 枕元に置いてあった本の表紙が脳裏にちらつく。


 あれは絶対お父さんの本を読んでいた証拠だ。


 お父さんの本――お父さんの書いた本、『緋色の織』を。



「文芸部だねっ、……」



 あ……なんか。


 もう取り繕えないや……。


 誰が見たって引きつった笑顔しかできなかった。


 だから無理して笑うのは、やめる。


 ごめんね、スイくん。



「緋織先輩?」



 元気が有り余ってて、テンションが高くて。


 私もそんな緋織が大好きだけど、いつもそうしていられるわけじゃない。


 こんな私もいるって知ってほしい。



「文芸部、明日じゃだめかな……?」

「え?」

「スイくんと二人でお喋りしたい……」

「わかりました」



 悩む素振りも見せないまま即答された。


 拍子抜けすぎて「へ?」と間抜けな声を出してしまう。


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