クールで一途な後輩くんと同居してみた
「――――それで、スイくんみたいな人がお父さんだったらいいなって、お父さんの代わりになってくれないかなって、ずっと考えてたの」
だからごめんなさい、と。
緋織先輩が俺を男として見ないのは、彼女にとって俺が父親のような存在だったから。
そうやって、俺は遠回しにフラれた。
あぁ……だからか。
父親に恋心なんて、不自然なことこの上ない。
今までの違和感が全て納得に変わっていく感覚がした。
「っ……ごめん、ごめんなさいっ……。気持ち悪いよね、こんな、っ」
緋織先輩からボロボロと落ちる大粒の涙。
父親のお葬式で泣かなかった彼女が、俺への謝罪で泣いている。
どうして……。
「そうですね。俺は緋織先輩のお父さんではないですし、代わりにもなれません」
「っ……」
「でも緋織先輩がそんな俺を望むのであれば、そう思っていてもらっても構いません」
「えっ……?」
恋人じゃなくても。
緋織の心の支えになれるなら、どんなことだっていい。
「だっ……だめだよっ!」
強く首を振る緋織先輩。
「置いていかないでほしいって、ずっとそばにいてほしいって、欲張っちゃうよ……っ!」
「いいですよ。ずっと一緒にいます」
「むりだってば、」
「できますよ」
「なっ、なんで言い切っちゃうの」
「それは、だって……」
俺が緋織先輩のこと……。
もっと困らせるだけだから、はっきり言葉にしない方がいいか。
だけど最後くらいはそれらしいことを言わせてほしい。
「俺だって緋織先輩がそばにいてくれたらいいなって、思ってるからです」