クールで一途な後輩くんと同居してみた
なんとなく、いけそうな雰囲気なのが余計に惑わせる。
フった男のわかりやすい下心、普通なら気持ち悪いはずなのに。
じ~っと俺の反応を待つ緋織先輩と数秒間見つめ合う。
え、まさかいけるのこれ?
「い、いいんですか?」
「いいわけないよっ!」
緋織先輩がそっぽを向く。
ダメでした。
当たり前だ。
「う、うぅ、やっぱりそうなんだっ……」
ショックを受けた様子で、緋織先輩はなにやら頭を抱えている。
なにが『そう』?
俺の下心が気持ち悪いって話?
「え、えっとね」
そろり、目線だけを向けてきたその頬は赤く。
「せ、背中流すくらいなら……いいのかな?」
自信なさげに放つ言葉は弱々しい。
「いいんだ……」
いいんだ……。
いけちゃったよ……。
「あ、う、うっ、うぅ~、期待させてごめんっ、やっぱりよくないよぉっ!」
しかし現実は甘くなかった。緋織先輩の顔はみるみる内に赤みを増していき、俊足で廊下に移動したのだ。
ドアが完全に閉まる前、少しだけ顔を残したかと思えば、
「スイくんの……すけべっ」
到底緋織先輩から出るなんて考えていなかった悩殺台詞を浴びることになるなんて。
ドッッッッッ(心臓に衝撃が走る音)。
さすがの俺も、うまく対処できない。
地面に膝を付く。
やば……やばー……最高。
狂いそうなほど可愛い。
おい、フラれてから始まってどうすんだよ……。