クールで一途な後輩くんと同居してみた
スイくんが喜ぶようなことを考えて言えばいいのかな?
……な、なんだろう。スイくんの喜ぶこと。
そういえばわたしの好きなものは教えたけど、スイくんのものは聞いてない。
でもスイくんもドーナツは好きだって言ってたな。
「それにしても、いつ自覚したのよ?」
「自覚?」
「そう、恋の自覚」
恋の自覚?
自分の中にピンと来るものがなくてポカンとしてしまう。
私の反応を見て、しぃちゃんも同じような顔をした。
「……嘘でしょ?」
「えっと……なんとなくわかるけど、誰が誰に、恋の自覚?」
「言わせるの?」
「念のため……」
しぃちゃんは深く息を吐いて、吐き終わって、私をまっすぐ見つめた。
「緋織が、スイくんに、……でしょ」
「…………」
「……あっきれた。それでスイくんの好きな人枠を略奪したいとか言ってるの?」
私の悪いところ、出ちゃった。
好きって気持ちがよくわかってない。
「好きになってほしいなら、まず緋織から好きにならないと駄目でしょ?」
「……そう、だよね」
スイくんのことは好き……一生一緒にいたいくらい好き。
でも好きの区別がわからない私にしてみれば、恋愛なのかそれ以外なのか判断がつかない。
だからスイくんから恋愛の好きをもらえば、それで解決すると思った。
もしそうなった場合、スイくんが私からの恋愛の好きをほしがる――という可能性を消したまま。