クールで一途な後輩くんと同居してみた



「わたし、恋愛感情と性的欲求には近しいものを感じているのね。そういうのがないって人もいるだろうけれど……」

「そ、そっ、かっ?」



 声が裏返る。


 どういう反応をするのが適切なんだろっ……!?



「どう? 緋織はスイくんとキスしたいって思う?」

「へえぇ……っ!?」



 スイくんと、キス!?


 そんなの考えたことなかった!



「確かに……。オレ、緋織と詩歌にはキスできねぇわ」

「は? わたしもお断りよ、気持ち悪い」

「私も大ちゃんとは嫌かも!」

「……全員同じ意見だったのに、なんでオレ悲しくなってんだろ」



 おお、大ちゃんとは嫌だってはっきりわかる!


 大ちゃんへの好きは恋愛感情じゃないんだ。でも、これはなんとなくわかってたな。


 じゃあこの調子でスイくんとも想像して……。


 想像、して……。


 …………。


 ポンと浮かんだのは、目を閉じてこっちに近付くスイくんの姿。



「……す、スイくんとも、できないよ?」



 想像の私は思いきり押し退けてしまった。


 恋じゃなかったかぁ……。


 なんか、残念。



「待ちなさい緋織、これを見なさい」



 掲げられたのは、小さな手鏡。


 鏡に映るのは私の顔。


 ……とびきり、真っ赤な。



「ええ!? 私、赤っ!?」

「赤いわね? 大吉とはそうならないわよね?」

「なるわけないよっ! 大ちゃんは、なんか……生理的に無理っ!」

「この話のテーマ、『大吉を傷付けよう!』じゃないよな……?」


 
< 76 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop