クールで一途な後輩くんと同居してみた
「わたし、恋愛感情と性的欲求には近しいものを感じているのね。そういうのがないって人もいるだろうけれど……」
「そ、そっ、かっ?」
声が裏返る。
どういう反応をするのが適切なんだろっ……!?
「どう? 緋織はスイくんとキスしたいって思う?」
「へえぇ……っ!?」
スイくんと、キス!?
そんなの考えたことなかった!
「確かに……。オレ、緋織と詩歌にはキスできねぇわ」
「は? わたしもお断りよ、気持ち悪い」
「私も大ちゃんとは嫌かも!」
「……全員同じ意見だったのに、なんでオレ悲しくなってんだろ」
おお、大ちゃんとは嫌だってはっきりわかる!
大ちゃんへの好きは恋愛感情じゃないんだ。でも、これはなんとなくわかってたな。
じゃあこの調子でスイくんとも想像して……。
想像、して……。
…………。
ポンと浮かんだのは、目を閉じてこっちに近付くスイくんの姿。
「……す、スイくんとも、できないよ?」
想像の私は思いきり押し退けてしまった。
恋じゃなかったかぁ……。
なんか、残念。
「待ちなさい緋織、これを見なさい」
掲げられたのは、小さな手鏡。
鏡に映るのは私の顔。
……とびきり、真っ赤な。
「ええ!? 私、赤っ!?」
「赤いわね? 大吉とはそうならないわよね?」
「なるわけないよっ! 大ちゃんは、なんか……生理的に無理っ!」
「この話のテーマ、『大吉を傷付けよう!』じゃないよな……?」