クールで一途な後輩くんと同居してみた



「あ、スイくん。お風呂もうすぐ沸くけど先入るー?」

「一緒に入りましょう」

「はぇ、へ?」



 という矢先のこれだった。


 すぐに修正されたけど、そういう言葉がスイくんから出るだけでもわたしは驚きに包まれる。


 成世先輩の言ってたこと、あながち間違いでもないのかも……って。


 だから期待に応えようとした……けど、無理だった……。


 今はスイくんが一人でお風呂に入っている。


 わたしは自室で壁にもたれて何度も深呼吸。


 心臓が鳴り止んでくれる様子はない。



「うぅ……頑張ればよかった……」



 しかもちょっと後悔している。


 だってスイくん、背中流すくらいならいいのかなって言ったとき嬉しそうに見えたんだ……。


 色仕掛け、本当に効くのかもしれない。



「……まだ入ってる、かな」



 廊下に出て耳をすませる。


 微かに聞こえる、シャワーの音。


 ……行って、みる?


 ごくりと唾を飲んで、足を踏み出した。


 一段、また一段と、ゆっくり階段を降りていく。


 こうしてる間にスイくんがお風呂から出てきたらいいな、って……また逃げるための選択肢を考えたのがよくなかった。


 靴下を履いた足裏が、うまく平らな部分に乗らなくて。


 角から、滑った。



「あっ、」



 バランスを崩した私は当然のごとく。



 ――ズダダダダーッン!



 お尻から、大胆に階段を滑り降りたのだった。


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