クールで一途な後輩くんと同居してみた
「ごちそうさまでしたっ……!」
ラーメンデートもそろそろ終盤。
合掌をして「美味しかった~」と笑みを浮かべる緋織先輩の前では、ラーメン、チャーハン、餃子、加えて唐揚げ、ライスの皿が一欠片の残りもなく並んでいる。
ほんとに全部一人で食べた……。
自分の前にあるラーメンの器が恥ずかしく思えるほどに、彼女の食べっぷりは気持ちよかった。
スポーツだけじゃなく、大食いの才能もあるなんて……俺の好きな人、ただ者じゃないなっ……。
謎の誇らしさを胸に、会計へ進む。
伝票を持とうとした手が緋織先輩と重なった。
「あっ……!」
緋織先輩だけが焦った声を出す。
俺は……開き直りすぎて、冷静に『ラッキー』と心の中で口笛を吹いていた。
「ご、ごめんっ」
「……いえ」
緋織先輩はさっと手を引っ込め、胸の前に持ってくる。
それから、伝票の所有権が渡った俺の顔をじろじろと観察してきた。
伝票を取り返したいのだろうか。残念、俺が先に取りました。だからずっと俺のこと見ててください。
「……はぁ」
願い叶わず、すぐに目線は逸れた。しかもため息付きで。
まさか態度が顔に出ていた?
ウザいどや顔、してたかもしれない……。
「スイくんは、いつもクールだよね……」
「冷たいってことですか」
「ううん……優しいし……かっこいい」
えっ。口説かれてしまった。