クールで一途な後輩くんと同居してみた
「……もしもし」
『あっスイく~ん! ママだよ、元気~っ?』
「なんの用?」
『やん、冷たぁい。スイくんが全然連絡くれないから、ママ寂しくて電話したのにっ』
「切っていい?」
『やだっ、ママに対してその態度、すごい度胸! 反抗期なの~?』
……ウザい。
一度も『ママ』なんて呼んだことないのに、一人称にするのおかしくないか。
毎日緋織先輩のお母さんとストレスフリーな会話をしているからこそ、際立つダルさ。
本当に切ってやろうかな……。
『ねぇスイくんっ、夏休みは帰ってきてくれるの? ママパパ寂しすぎて、毎日緋織ママに鬼電しちゃうかも~っ!?』
「帰るから。やめて、絶対」
『いぇ~い! いつ? どれくらい? 毎日パーリナイするための食材買い込んどかなきゃっ!』
「……後でまた連絡する」
『いやっ! それ絶対しないでしょおっ! いつなの? いつなの! 答えるまで逃がさないっ!』
「……はあぁ」
今すぐ決めろって?
電話から意識を外して緋織先輩を見る。彼女はそわそわと俺の様子を窺っていた。
俺の視線に気付くと、へらっと軽い笑顔を向けてくる。
夏休み……同居……といえば、どれだけ夢が詰まっているのか母さんはわかってない。
帰省するより先に決めないといけない大事な予定がこっちにはたくさんあるんだ。
だから。
「今すぐは無理。後でかけ直すから――」
『なんなら緋織ちゃんも連れてきていいから~っ!』
「え?」
『夏休みはこっちで同居! ママ、名案じゃない!?』
……ママ、名案じゃん。