クールで一途な後輩くんと同居してみた



「母さん、父さん、聞いてる? 鍵開ける、冷房付ける、飲み物の用意! さっさとする!」


「は、はいぃっ」

「了解です!」



 親に指示を与えて従わせる、一人息子の姿。


 四宮家のリーダーはスイくんなのかな……。


 やっぱり気の知れた家族の前じゃ、印象変わるなぁ。



「スイくんがよくため息吐くのって、癖……なのかな?」

「え? あ……そんなしてました? まぁ、昔から色々苦労させられてきたんで、癖でしょうね……」



 慌ただしく動く両親を遠目に、スイくんは呆れた表情を浮かべた。



「緋織先輩、手を洗いましょう。土付いてると思うんで」



 その言葉に視線を下ろす。確かに爪の間に土が入り込んでいた。


 草を掻き分けたときに入ったんだ。



「母さん、今度はピアス落としてた。今日はもう付けないでいい。父さんは服汚れてる、着替えて」



 ……よく、見てるんだな。


 視野が広いんだろうか。



 その後、手を洗って麦茶をいただいて。



「緋織ちゃん……おわびに、スイカ食べて?」



 半分にされた大きなスイカが出てきたので、遠慮なく平らげさせてもらった。


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