見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
「……そんなにあの人…ノアさんがいいの?」
「はい。乃愛は俺が唯一愛する女性ですから」
俺の腕を掴む手を退かしながら言う。
「でもでも、昼間はああ言ってたけど、伊織くんが副社長だから近づいたんじゃないの!?」
はぁ……話にならねぇな。
「乃愛は俺が副社長だってこと、つい最近まで知りませんでしたよ。それに、俺もそんなくだらない権力や金で乃愛に取り入ろうとも思ってないですから」
「でっ、でも…伊織くんにはもっとレベルの高い人が…」
…そう言われて、久々に頭に血が上る感覚がした。
「いい加減にしてください!乃愛以上のレベルの女なんていません!可愛さも性格も最高の女です、俺には勿体ないくらいのいい女なんですよ。…だから俺は乃愛を一生離さない」
「…………」
やっと黙った…
今度こそ帰れるか。
「それでは失礼します」
ハッとしたユキさんは慌てて言葉を発した。
「あっ、じゃっじゃあ近くの駅まででいいから、だからお願い!一緒に行って?」
「……そこの駅までですよ……あと俺、着くまで喋りませんから」
俺、イライラMAX。
「うん…わかった…」
俺のあからさまな態度で不機嫌な事がわかってもらえたらしい。
俺に触れることもなく、おとなしくなった。
それから無言で歩くこと10分…
「じゃあ本当にこれで失礼します」
「ありがとう伊織くん。それじゃあまたねっ」
軽く会釈をして、俺は駅を離れた。
……疲れた。
歩くよりもイライラして疲れた。
こんなにイライラしてストレス溜めるのなんてすげぇ久々。
放っておいてもよかったのかもしれないけど、一応はスタッフだしな…万が一何かあれば、俺の立場もあるし。
おっと、快斗に連絡しないと。
「あ、快斗か」
『伊織さん、お疲れでした!こっちはバッチリ』
「そうか…悪かったな、手間かけさせて」
『何言ってんのさ、俺らの兄ちゃんなんだから力になるのは当たり前だし』
「…ありがとな。いい奥さんと弟達に巡りあえて俺は幸せ者だな」
『姉ちゃんはもうケンがホテルに送ってったから。じゃ、すぐ迎えに行くね』
「そうか、ありがとな」
ふぅ……寒いな。
ユキさんと離れてやっと少し落ち着きを取り戻すと、長野とは段違いの寒さを体が感じ取った。
そして俺は駅から少し離れた場所で快斗に拾ってもらい、乃愛の待つホテルに戻った。