見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
今妻の不安
俺もこっちで公佳と話してたんだけど、しばらくするとルークが俺を呼んだ。
行ってみると乃愛がカウンターに伏して寝てた。ふ、気持ちよく酔えたのかな。
「疲れたんだろう、ノアは頑張っていたからね。…僕はこれを片付けてくるからノアを頼むよ」
とルークがカクテル器材を持ってキッチンの奥へ消えた。
俺は乃愛をお姫さま抱っこして公佳のいるソファに戻り、乃愛を俺の膝枕で寝かせた。
「…ほんとに可愛いわね、乃愛ちゃん」
「あぁ、可愛くてたまんねぇよ。可愛くて、甘えさせたくて、守りたくて……でも乃愛はすげぇ包容力があってさ……その実、俺が乃愛に甘えて、守られてんだ」
乃愛の頭を撫でながら言う。
「えぇ…わかるわ、乃愛ちゃんの包容力。今日、一緒に料理してて私も思ったわ。私は妹みたいな…子供みたいな気持ちだったもの、ふふふ」
「あ……そういやさ、乃愛と指環を買いに行った時に乃愛が言ってたんだ。俺はブルーのサファイアのイメージで、公佳はルビーの…何だっけ…あぁ、ピジョンブラッドのイメージだってさ」
「ピジョンブラッド…てことは、それはすごく褒められているってことよね。乃愛ちゃん……嬉しいわ…そんな風に思っててくれてるなんて…」
「でな、サファイアとルビーは同じ鉱物でさ」
「そうなの?全く違う色よね?」
「えーと鉱物名が確か…コランダムっつって、その赤いのがルビーで、それ以外の色のをサファイアって呼ぶんだと」
「詳しいわね」
「あぁ乃愛の受け売り。乃愛はジュエリーとしてじゃなくて、鉱物が好きなんだって。ふ、また一つ乃愛の魅力が増えたよ」
「そういえばさっきもピンク色を何とかサファイアの色って言ってたわね。ふふ、ジュエリーじゃないってところがまたいいわね」
「俺は買ってあげたくなるけどな。…んで、サファイアとルビーは同じ石だから兄弟みたいなもんなんだって。で、今日ルークにも姉弟って言われただろ?俺、それ全然違和感なくて、やっぱりか!って思って。ははは」
「ふふ、そうかもね。何て言うか…元夫婦ではなくて身内みたいな感じよね」
「そうそう」
「でも本当に伊織は変わったわよね。伊織なのに初めて会った人みたいで、慣れるまでヘンな感覚だったわ、ふふふ」
「あぁ、俺を知る人、全員に言われるんだ。〝あんなにカッコつけだったのに〞って」
「ふふっ、そうだったわよね。でも今の伊織の方が素敵だと思うわ。私だけじゃなくて、たぶん皆そう言うと思う」
「ありがとな。…俺もマジで今の自分が好きだし、乃愛を好きでいることに誇りを持てるんだ」
「うん、素敵だわ」
「でも公佳も変わったよな。俺も今日初めて本当の公佳を見た気がするよ」
「えっ…そう?変わった?」
「あぁ、俺が見たことのない表情でルークを見てるし、俺にはしたことのない甘え方をしてるし」
「…ほんと?」
「あぁ、マジで。…だから嬉しかったよ。公佳にも最愛の人ができたんだ、ってね」
「……さっき乃愛ちゃんと料理してる時に言われたの。料理も気持ちももっと素直でいいんですよ、って。…私はもっとルークに甘えていいんだって言われた気がして…驚いちゃった」
「ん?まだ遠慮してる部分があるのか?」
「遠慮というか…言いづらいというか…。そんな所を乃愛ちゃんには見透かされてたみたいで…」
「つか、何が言いづらいんだ?」
「…あ…その……夜の生活とか……」
公佳が顔を赤くして、顔を近づけてコソッと小声で言う。
何かは知らんけど、それは確かに言いづらいか。
「でもそれなら尚更言った方がいいんじゃねぇか?ははっ」
すると「んー…」と目を覚ましてぼーっとした乃愛が、顔を近づけてる俺達を見ると、「やなのー…伊織…公佳さんに行っちゃやなのー…」と泣きそうな声で抱きついてきた。
…やべぇ、それ可愛すぎだって。
だから俺も抱き締め返して頬擦りする。
「大丈夫。愛してるのは乃愛だけだから、どこにも行かないよ」
「んー…伊織、大好き…」
「俺も」
ちゅ、と軽くキスすると安心したのか、乃愛は抱きついたまま、また寝息をたて始めた。