見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
大通りに面したビルの10階へ上がる。
横浜支店…ここだ。

よし!頑張れ、私!
両手でパチンと頬を叩いて気合いを入れた。

お昼休みの時間、宏哉のいるオフィスに、まず私だけ入った。
青井さんはまだドアの外で待っててくれる。


「すみません、お昼休憩のところ失礼いたします。桐生の妻です、桐生がいつもお世話になっております」
と一礼すると、オフィス内でそれぞれの時間を過ごしていた人達がザッと一斉にこちらを見た。



「え?…乃愛?ほんとに?」

宏哉が驚いてる。


…でしょうね。

以前のガリガリでも豚さんでもなく、それこそ別人並にすべて整えてあるんだもん。

「やだ、長いこと会ってないからって、妻の顔も忘れちゃったの?」
少し首を傾げてクスクスと可愛く笑う。


するとそこかしこから、
「え?あの人が奥さん!?」
「わー、きれい!」
「マジかわいっすね!」
「すげ、めっちゃスタイルいーじゃん!」

とか小さい声だけど聞こえてくる。
そう思ってもらえるのはすごく嬉しい。


「宏哉、久しぶりだね。話があるんだけど…外で話そうか」

そう言うと、
「え、もう行っちゃうんですか?」
「こんな綺麗な奥さん、もっと見せろよー」
「いいなー、桐生さん羨ましい」
と、今度は大きな声で聞こえてきた。

同僚にそんな事を言われた宏哉は「いや、ここでいいよ」ってなぜか照れながら言ってた。

「でも、 皆さんの前は恥ずかしいよ?」
離婚話だよ?慰謝料請求だよ?
まぁ宏哉は知らないだろうけど。

「いいよ、そんくらい」
ってまた照れてるんだけど、何の話だと思ってるんだろう。
まぁ宏哉がここでいいなら構わないけど。

「わかった。宏哉がいいのであればここで話すね」

皆さんに「失礼します」と一礼してから宏哉のデスクに行くと、近くの同僚さんが椅子を持ってきてくれたので、笑顔でお礼を言い、そこに座らせてもらった。

オフィスの皆さんが私達に注目してざわつく中で「じゃあ…宏哉、これ」と渡した、二つ折の一枚の紙。

「ん、何?」

「離婚届。宏哉も記入してほしいの。私のところは記入済みだから」


一気にオフィス内がシン…と静まり返った。

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