見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
「……ノアさんの…そのまっすぐさ……すっごい痛いなぁ……初めて会った時も…そのまっすぐさが…憎らしくて……羨ましかったんだぁ……」
ユキさんが…ぼろぼろと涙を溢しながら言う。
「……わかってるよ……やっちゃいけない事だって……でもあたし…それでも伊織くんと結婚したかったの!」
「なぜですか?伊織が副社長だからですか?お金を持ってるからですか?」
「ちっ違うのっ!ちゃんと好きなのっ!」
「本当に好きなら…別の人の子どもを身ごもる事なんてできないはずです」
…そう乃愛に冷静に言われたユキさんは、グッと言葉に詰まった様だった。
そして、自嘲して言う。
「……あははっ………やだもぉ……本当にノアさんてまっすぐ過ぎだよ……もぉ論破されまくりじゃない…」
「私は論破したいのではなく…ただ…お子さんが小さい今は特に…ご自分よりもお子さんを大事にしてほしいんです、母として」
その乃愛の言葉に、ユキさんが、ハッと表情を変えた。
「母…として……」
「はい。母として。…お子さんのこれからの事を、ちゃんと考えてあげて下さい」
「この子の…これからの事……」
「はい。理由は何であれ、生みたくて生んだお子さんですよね?…なら父親が誰であろうと、母としてちゃんとお子さんと向き合って…愛して…育ててほしいんです」
「……愛して……そうよね…あたしはこの子を生みたくて生んだの……あたしの子なの……あたしの最愛の息子なの…っ」
…ユキさんはゆっくりとしゃがむと、小さな男の子を抱き締めた。
「ごめんね…ダイちゃん……ごめんね…」
「ママ?ないてるの?」
「ううん…ダイちゃんが大好きなだけだよ」
「ぼくもママ、だいすきだよ」
それからユキさんは立ち上がり、乃愛の方へ向いた。
「ノアさん……本当にあなたのまっすぐさって痛くて怖くて…突き刺さる……でもお陰で…本当に大事にすべき事に気が付けた………ありがとう……」
そしてゆっくりと俺に向き合った。
「伊織くん……たくさん迷惑かけてごめんなさい……もう本当にあなた達に関わらないわ」
「…えぇ」
「…伊織くんは本当に素敵な奥さんを捕まえたね」
「あぁ、俺にはもったいないくらいすげぇ奥さんだよ、マジで。可愛いしな」
って乃愛を見れば「そっそんなことないって」って慌ててる。
だからそれが可愛いんだって。
それからユキさんは「皆さん、本当にご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」と俺達に詫びて、お子さんと手を繋いでこの場を後にした。
これで…本当に大丈夫だろう。
ふぅ……と肩の力が抜けた俺に、乃愛が優しく微笑みかけてくれる。
「乃愛…ありがとな……あと、すげぇ嫌な気持ちにさせてごめん」
「ううん、私は平気。あんなこと言われて…伊織の方が嫌な気持ちになったよね」
「乃愛……はぁ…何でそんなに優しいかなぁ…マジで勝てないよ…なぁあっくん、ママはすげぇな」
礼翔に笑いかけると、礼翔は「まーま」と乃愛に手を伸ばした。
そしてまた乃愛が抱っこすると、礼翔は安心したように乃愛に身体を預け、目を閉じた。
「あはっ、眠かったんだ。ごはんと眠い時はママなんだよねー。ほんと、ちゃっかりしてるんだもん…ふふ」
そう言いながら、礼翔のお尻をトントンする乃愛。
ん……礼翔の気持ち、分かる気がする。
なんかさ、すげぇ安心できるんだよな、乃愛にくっついてると。
「いーなー、俺も乃愛さんに抱っこされてぇなー」
「バッカ、姉ちゃんよりでかい身体のハルを抱っこできるわけないじゃん、ははは」
「じゃあ俺が抱っこするっ、ぎゅーってするっ」
なにっ!?
「んな事させるかってのっ!」
と俺がハルに技をかけてたら、乃愛に「パパ、シーッ」て注意されちゃった……しょぼん。