見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
和解
それから親父と兄貴達家族は別の用事があるとかで揃って移動していった。
そろそろ諒達が来る頃だからと待ち合わせ場所に向かっていると、今度は「乃愛」と声がかかった。
そちらを見ると、逢坂さんとその傍らに見知らぬ男性がいた。
「あっ、葉月」
逢坂さんが俺達に「お久しぶりです」と挨拶し、男性は一礼した。
久しぶりに見た逢坂さんは以前の時とは違っていて、どことなくすっきりした様に見えた。
「乃愛…会うのは久しぶりだね」
「うん、久しぶり。連絡ありがとう、来てくれたんだね」
「うん…本当に来ていいのか迷ったんだけど。……九十九さん、乃愛、あの時は本当にごめんなさい。…あれから私、親に全部話して、親から離れて、一人で一から始めたの。…九十九さん、乃愛…遅くなってしまったけど、病院の費用とお二人へのお詫び料です。受け取って下さい」
と、バッグから封筒を取り出し、頭を下げながら俺達に差し出してきた。
「いや、それは本当にいいから」
そう言うと、傍らにいた男性がまた一礼して話し出した。
「はじめまして。僕は葉月さんとお付き合いしている矢代 勝(やしろ まさる)といいます。…葉月さんから全部聞きました。僕が知っている葉月さんは真面目な女性です。このお金も反省の意味を込めて彼女が貯めたものです。もちろんこれで許してもらえるとも、許してもらおうとも思ってません。葉月さんがした事はそれくらい酷いことです。…ですが、自分のした事を後悔した彼女の…せめてもの償いの気持ちなんです。どうか…受け取ってもらえませんか」
…その気持ちはすごくわかるのだけど…でも封筒はそれなりの厚みがあって、そんな大金を受け取るのは…と俺が躊躇していると、乃愛がスッとそれを…受け取った。
「わかりました。葉月、これは受け取るね」
え?乃愛が、受け取った…?
「乃愛……ありがとう」
逢坂さんの顔が、ホッと少し緩んだ。
「ねぇ、葉月は矢代さんと結婚するの?」
「え?……まだそんな話は…ていうか私が結婚なんて…」
「矢代さんはどうお考えですか?」
「僕は、葉月さんさえ良ければ結婚したいと考えてます」
「…勝さん…」
「葉月はどうなの?」
「私も…私でよければ……でも…」
「そう、わかった。じゃあ…これは先にお祝いとして渡しておくね」
と乃愛は受け取ったばかりの封筒を、逢坂さんの手に持たせた。
「えっ、乃愛…?」
「だから結婚式の時はあまり包めないよ?ふふっ」
…そっか。乃愛が大金をあっさり受け取るなんておかしいと思ったら…
「葉月、もう苦しまなくていいの。私達はこの通り幸せに暮らしてるから。それに葉月の気持ちはちゃんと受け取ったよ。…だからこれからは葉月も矢代さんと幸せになって。ね?」
「乃愛……ありがとう…ほんとに…ありがとう…」
「乃愛さん、九十九さん…ありがとうございます」
二人が深く頭を下げた。
「いや俺は何も…」
「ふふっ、私が幸せなのは伊織が私と礼翔を大事に愛してくれてるからなの。だから伊織のおかげだよ」
「ふ……参ったな、ほんと乃愛に言われると言い返せないな」
「葉月さんが言ってた通り、本当に素敵な方なんだね」
「うん…自慢の親友なの」
「あっ!確かに乃愛はすっごい素敵だけど惚れないでよ!?」
ま、とりあえず気になる事には全て牽制かけとくのがオレ流だからして。
なのに…
「ちょっと伊織、そんなのあるわけないでしょ!? 矢代さん、夫が失礼な事を言ってすみません!もぉ…伊織、めっ!」
って怒られた……しょぼん。
つか〝めっ〞て、俺は礼翔と一緒の扱いか…
……クッ
「乃愛…可愛すぎ」
「なっ何でそうなるの!?」
って赤くなるのも
「いや、可愛すぎだから」
ほんと、何年経ってもママになっても乃愛は可愛いんだよな。
未だに乃愛を見てるだけでニヤニヤしちまうんだから。