見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
離婚届へ記入し終わった宏哉に、社長にもこの話は伝わってるから、と伝えると「えっ、何で社長に…」って宏哉は驚いてた。

「社長が私の伯父さんだって、忘れてたの?」

「あっ……」

「宏哉と離婚する事を理由も含めて父に伝えたら、すぐ伯父さんに連絡したみたい。それと、宏哉のご両親にもお会いして離婚すると伝えてあるから。もちろん証拠もお見せしてね。ご両親、泣いて私に謝って下さったわ…。お二人とも優しくて私にも良くして下さってたから…私も心苦しくて…胸が痛かった…」

「な……ん…」

私は、ふぅ、と一息吐いてから宏哉を見た。

「それにしても…いない人の悪口を言うのはさぞ楽しかったんでしょうね。宏哉、会わない内に顔が醜く歪んだもの。あぁ、葉月もよ?せっかく可愛いのに…台無しよ」


すると宏哉は土下座してきた。

「ごめん!乃愛!俺は乃愛が好きなんだ!乃愛を愛してるんだ!だから…離婚はしないでくれ!」

「…私を愛してるの?」

「あぁ!もちろん!愛してるのは乃愛だけだ!」

「本当に?葉月よりも?」

「当たり前だ!葉月ちゃんの事は何とも思ってない!愛してるのは乃愛だけだ!」

「そう……」

「だから離婚なんてしないでくれ!俺、心を入れ替えるから!会社も辞めて一から出直すから!本当に乃愛を…乃愛だけを愛してるんだ!」

「宏哉……頭を上げて?」

「乃愛……許して…くれるのか…?」


宏哉が私を見上げたところで、私は表情を変えた。

「そんなやっすい『愛してる』って言葉、初めて聞いたわ。虫酸が走るからやめてくれる?」

土下座する宏哉を冷めた目で見下ろしながら、自分でも驚くほど低い声で、吐き捨てる様に言った。


「……乃…愛…?」
宏哉が情を捨てた私の態度に驚いてる。

「それと、その土下座も。あなたの土下座に価値があるとでも?それに、あなたには葉月がいるでしょう?…私の誕生日の夜に…一緒に過ごしてたじゃない。そこで…豚の私は抱けないって、葉月と結婚すればよかったって言ってたじゃない。いいんじゃない?結婚でも何でもすれば。あぁでも葉月は家事が苦手だから、私の方がマシなんだっけ。それで葉月が婚約者と結婚しても2人で関係を続けていくつもりだったんだものね。でもごめんなさいね、私、あなた達のお世話係になる気はないの」

「え…何でそれ……ち、違うんだ!あれは本心じゃない!」

「…何で知ってるのかって、それ、聞きたい?…それは直接、この耳で聞いたからよ。私の誕生日のあの日、夜の9時過ぎに、あなたのアパートで、あなたと葉月が話しているのをね。…話のあとにあなた達が何を始めたのかもわかっているわ」

「え……来た…のか…?」

「えぇ、サプライズでね。あなたが帰って来られないって言うから、私が行ったの」

「そん……な…」

「本心であろうとなかろうと、あなたが発した言葉であることには変わりはないわ。それに他にも沢山あるのよ。あなたと葉月が私を豚だの何だのとバカにする音声は。充分すぎる程にね」

「それは……」

冷静に言い、宏哉の言い訳を切り捨てた。

「あぁそれと。マンションは私の親名義だから解約して売る事にしたわ。あなたの荷物は全部こっちの住所に送ったから自分で何とかしてね。明日到着するから」

「え…嘘だろ…」

「本当よ。私の親の所有するマンションなんだもの。持ち主がどうしようと勝手でしょ?」

「でも俺も暮らしてたんだぞ!?」

「大学の時に付き合い始めてすぐに転がりこんできて居座って、社会人になってもそのまま住み着いてたんじゃない。結婚したから引っ越そうって言っても『タダで住めるんだからいいじゃん』ってそのままで…私や私の親に家賃分の一回も払ったことないじゃない」

そこかしこからひそひそと「何それ…」「甲斐性なしかよ」「ひでぇな」「サイテー」とか聞こえてくる。

「あ…」

「忘れてたの?それとも結婚したら自分の持ち物になるとでも思ってた?残念だけど売ったお金は財産分与にはならないからね」

「………」

そこへ畳みかけるように青井さんが話し掛けた。

「今後のお二人の態度や行動によっては、乃愛さんへの接近禁止命令を出すことも検討しております。乃愛さんへ連絡することがあれば、私を通して下さい。封筒の中に名刺も入ってますので、そちらにご連絡を」

葉月はギリギリと歯を食い縛るようにしながら私を睨んでいるが、それすら私は冷めた目で見ている。
本当に美人が台無しね。

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