愛は手から零れ落ちる 2nd.
病院に着いて、眞紀さんは駐車場に車を止め、自分のシートベルトを外した。
「眞紀さん、ここで大丈夫です。」
「今日は櫻井君に挨拶に行くわ。櫻井君の顔を見ておきたいし、彼も私のこと知っておいた方が安心だろうし。」
「すみません。」
ナースステーションで来客カードに記載し、病室に向かった。
「壮・・・」
「あー、朋美・・・」
「どう? まだ痛む? 」
「うん、まだ痛い。身体動かせない・・・あれ、そちらは誰?」
「こちらマスターの奥様の眞紀さん。私、昨日から眞紀さんのお宅に泊まらせてもらっているの。」
「ホント・・・あの、お世話かけてすみません。」
「櫻井君初めまして、眞紀です。いつも主人がお世話になってます。」
「いえ、僕らいつも良くしてもらって・・・、今回はさらに世話になってしまって・・・」
「壮、眞紀さん元警官なのよ。知ってた?」
「そうなの? 知らなかった。それに俺、マスター離婚してると思ってた。」
「壮ったら・・・すみません。もー、なんでもストレートに言うんだから・・・」
「いいのよ、あの人自分のことは話さないでしょ。私、あの人が口の堅い人だから結婚したの。仕事柄その方が良かったしね。」
「なるほど・・・」
「フフフ。旦那に聞いていた通り櫻井君はクールイケメンね。じゃあ、お邪魔でしょうから私は退散。2時間くらいで迎えに来るからね。朋美ちゃん、病院内もあまり歩き回らないようにね。」
「はい、わかりました。ありがとうございます。」
眞紀さんは病室を出て行った。
「眞紀さん、いい人だね。」
「とってもいい人。それにしてもマスターに元警官の奥さんと子供二人が居て今別居中って想像もできなかった。」
「ホントだね。フフ、痛っ! ・・・笑うと痛い・・・」
「壮、無理しないで。辛かったら寝ていいよ。」
「ううん、大丈夫。朋美・・・」
壮は布団からゆっくりと手を出した。
朋美はその手をぎゅっと握った。
「朋美、ほんとゴメン。」
「そうだよ、心配したんだから・・・」
「そうだよな。俺が朋美を守らなくちゃいけないのに・・・」
「私・・・また置いてきぼりにされてしまうのかって、一人になってしまうのかって・・・」
また、涙が出てきた。
壮は朋美の手を強く握った。
「朋美、俺はおまえのこと絶対一人にしないから・・・」
「うん。」
私はそっと壮の唇にキスをした。
壮はその後少し寝ると言って寝てしまった。
病室は嫌いだ。イャなことをいっぱい思い出させる。それでも今は壮の為に出来ることをしてあげようと思った。
家から持ってきた着替えなどをロッカーに入れて、入院した時の服を持ち帰ろうと探したがここにはなかった。きっと血だらけで、病院の人が処分してくれたのだろうと思った。それを考えると震えが止まらなかった。
・・・はやく、はやく良くなって・・・壮・・・私を抱きしめて・・・