愛は手から零れ落ちる 2nd.
朝、マスターの入れるコーヒーの香りで起きた。
「あっ朋美ちゃん起きた。」
「朋美、おはよう。」
壮も起きてベッドの上で身体を起こしていた。
自分が一番寝ていたのだと、少し照れた。
「おはようございます。凄く良く寝れました。恥ずかしい・・・壮、具合は?」
「大丈夫。もう熱は下がった。」
「あー良かった。」
「朋美、もう絶対無理はしないから、絶対朋美を一人にしないから・・・」
「うん、うん・・・」
また、涙が出た。
「さあ、朝ごはん食べよう。」
マスターと3人で朝ご飯を食べた。
そして昼前、マスターが帰えろうとした時、マスターの携帯が鳴った。
「眞紀、どうした? うん、うん、あーそうか、良かった。また何かわかったら連絡くれ。」
マスターは電話を切りにっこりと笑った。
「吉川が大阪で任意同行されたそうだ。」
「任意同行って・・・」
「大阪の路上で警官に職務質問されて、署に任意同行されて事情聴取中だそうだ。」
「まだ逮捕はされていないのですか?」
「間もなく逮捕されるさ。」
「そうですか。」
「まあ、これで一安心だな。」
マスターはにっこり笑って帰って行った。
「ねえ、壮・・・入院中に警察からなんか聞かれたりしたの・・・」
「ああ、どういう状況で刺されたかを聞かれた。」
「そうなんだ・・・大丈夫なの・・・」
「刺された場所にカメラがあって、俺の話と合致しているって言ってた。」
「そっか・・・」
「何心配してるの?」
「裁判とかになるのかな・・・また、刑が確定されて、刑期終えて吉川が出てきたらどうなるのかなって・・・」
「朋美・・・ごめんな。いろいろ心配かけちゃって・・・」
「でも・・・吉川・・・俺を刺した後、“ヤベッ、こんなつもりじゃなかった”って言ったんだよ。」
「どういうこと?」
「俺を刺すつもりは無かったってこと。脅しだったんだろうな。でもナイフ持っていたことは確かだし、もみ合っている間に刺したということ。」
「でも・・・刺したことに変わりはない・・・」
「ああ、でももうしないと思うよ・・・」
「そうかなー」
「朋美、大丈夫。絶対一人にしないから。ね・・・」
壮は私を抱きしめ優しいキスをした。