愛は手から零れ落ちる 2nd.
2日後、警察から吉川が逮捕されたと連絡が来た。
眞紀さんがマンションに来て、いろいろ説明してくれた。
「吉川は自分がやったと供述したので、その取り調べにより障害罪になるわね。」
「どのくらい服役するのですか?」
「うーん、それはまだわからない。吉川が以前にもなんかやっちゃってると長くなるし、初犯だと短いだろうし・・・」
「私、また出所してきたら同じような目にあうかもしれないと思うと怖い・・・」
「二人に近づかないようにという、接近禁止命令は出せると思うけどね。」
「あの、吉川は俺を脅すつもりだけだったとは思うんです。でも酒が入ると気が大きくなるというか、おかしくなっちゃう奴だから・・・」
「櫻井君は優しいのね。でもね、どんな状態でもやってはいけないことをしたんだからそれはダメなのよ。」
「朋美・・・そんなに心配しなくていいよ。俺が付いてるから・・・」
「櫻井君、はやく結婚しちゃいなさい。」
「そうですね。籍だけでも先に入れちゃおうかな。」
「壮、嬉しいけど、ちゃんとご両親の許可を取ってね。」
「ジイちゃんが保証人になってくれればいいよ。」
「ダメ。ご両親が居るんだから、それだけはダメ。」
「朋美ちゃんの保証人は私達がなるから大丈夫よ。でも櫻井君、朋美ちゃんの言う通りよ。大変かもしれないけど、そこはちゃんとしなさい。」
「うーん・・・俺、お袋苦手なんだよな・・・」
「壮、私は両親も親戚もいなから、だからね、いくら苦手だといっても壮がうらやましい。それなのにその人たちといがみ合うのはやめてほしい。」
「・・・俺じゃないよ・・・お袋が・・・」
「壮、とにかくそこをちゃんとしてくれないと私は結婚しない。」
「朋美、そこまで言わなくてもいいんじゃないか。なにこだわってるんだよ。」
「ハイハイ、そこまで。櫻井君はお爺様に相談して、とにかくご両親に結婚の了解を取ること。朋美ちゃんは櫻井君を信じて待つこと。いいわね。」
「はい。」
眞紀さんは喧嘩になりかけた二人をなだめてから帰って行った。
壮は日中普通に生活が出来るようになった。
「朋美、俺明日から不動産の方の仕事に行くよ。」
「無理しないでね。」
「ああ、でもバーは立ちっぱなしだからもう少しやめておく。」
「そうね。そういえば、マスターの息子さんが今バーを手伝っているのよ。」
「そうなの? 」
「眞紀さんがちょっと嘆いてた。」
「ふーん。どうして?」
「息子さん、結構頭が良くて研究者になるって言って今の大学に入ったらしいの。」
「マスターの血だね。」
「そう。でもね、その一方バーもやりたいって言いだしているみたいで、眞紀さんとしてはあまりにもマスターに似ていてあきれているのよ。それに正直反対みたい。」
「ふーん。まあ、こればかりは自分で決めるしかないよな。でも、息子さんがバーを手伝うようになったら俺たち必要なくなるな。」
「そっか・・・」
「まあ、当分は静観するしかない。明日はバーにも寄ってくるよ。朋美はどうする?」
「私は、会計事務所の仕事は行く。バーは壮が許してくれれば行ってマスターを助けたいけど・・・どうかな?」
「わかった。俺が夜迎えに行くよ。それでいいか?」
「明日、夕方バーでマスターに2人で話しましょう。」
「そうだね。」