愛は手から零れ落ちる 2nd.

「櫻井さん、お久しぶりです。」

「あー、友田さん。これはこれは・・・」
友田が壮の父に路上で声を掛けた。

「何年ぶりですかね? 櫻井さんが経理部にいらした時ですから、もう5年になりますか・・・」

「そうですね。お元気そうで何よりです。息子さんも事務所にお戻りになりましたか。」

「はい。やっと海外から戻ってきて、事務所の跡をついてくれる気になりました。それにもうすぐ結婚するんですよ。」

「それはそれは、おめでとうございます。」

「お宅の息子さんはおいくつになりましたか?」

「えーっと28、もうすぐ29歳ですね。」

「そうですか。」

「父の仕事を継いで、先日不動産屋の社長になりました。」

「それは凄い。ご結婚は?」

「まだです。どなたかしっかりした方いらっしゃいませんか?」

「そうですね・・・少し年上でよければ、うちに勤めている子ですごくいい子がいますよ。僕は息子と結婚してくれればいいなと思っていたのですが、息子のヤツ海外で知り合った子と結婚すると言い出して。まあこればかりはしかたない。」

「そんなに友田さんが良いという人って会ってみたいです。妻が今必死に息子の相手を探していましてね。今度ご紹介ください。」

「そうですか、わかりました。それなら今度事務所にいらっしゃいませんか? 」

「あー、いいですね。先ずはちょっと拝見したい。連絡させていただきます。」

「はい。お待ちしております。」
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