愛は手から零れ落ちる 2nd.
数日後のこと・・・
私が友田会計事務所での仕事を終え、バーに向かっているときだった。
「朋美ちゃんだよね~」
「・・・」
「おやおや、会ったばかりなのにお忘れですか? 吉川ですよ。」
「あの、私はあなたに用はありません。」
「冷たいなー、ねー、俺と付き合ってよ。」
「お断りします。」
「櫻井なんかより俺の方がいいと思うよ・・・ねー、優しくしてやるからさー、朋・美・ちゃん。」
私はあわててバーに向かって走った。
「おい、逃げんなよ。」
吉川は逃げ出した私の腕を掴んで引っ張った。
「イャ! 放して。やめて!」
「何してる! 」
丁度バーの前を掃除していたマスターが朋美の叫び声を聞いてホウキを片手に飛んできた。
「マスター、助けて。」
「放せ。」
マスターはホウキを振り上げ、構えている。
「ハイハイ。だれか知りませんが、俺は彼女の彼氏の友達で、あやしいものではありませんよ。」
「誰でも関係ない。彼女の手を放せ!」
「ま、今日は退散しますね~。またねー朋・美・ちゃん!」
吉川は薄気味悪い笑みを浮かべて帰って行った。