愛は手から零れ落ちる 2nd.

「どう? 壮、わかってくれたかしら?」

「相変わらずだね。いつも急だ。まあわかったけどさ、それで向こうで何するの? 」

「オーストラリアで、日本人が多く住む地域があるんだ。そこで、友達がやっている雑貨店を手伝ったり、リフォームの依頼を受けたりする。二人とも職場は一緒だ。」

「へー、まあいいんじゃない。」
壮は少しあきれながら言った。

「朋美さん、壮と爺さんをお願いしますね。」

「はい。それと、お父様もお母様も離れていても家族ですから・・・よろしくお願いします。」

「もー、朋美さんたら・・・」
壮の母の目には光るものがあった。

壮の父は自分の涙を隠すように言った。
「おい、肝心なこと忘れてるぞ。」

「あなたから話してよ。」
壮の母はまだ話せなく、そう言った。

「壮、そして朋美さん、僕らが日本にいるうちに結婚式してくれないか。近くの教会で。見届けてからオーストラリアに行きたいんだ。」
壮は父の話を受けて、優しい目で私を見た。

「朋美・・・いい?」

「はい。嬉しいです。」

壮は微笑んで、今度はマスターに・・・
「僕からのお願いです。マスター、朋美の父親役してくれますか?」

「えっ? 僕でいいの?」

「マスターが良いです。マスター・・・お願いします。」
私はマスターにお願いをした。

「ああ、一応嫁にOK取るけどな、やらせてもらうよ。バージンロード歩くんだよなー。ハハハ、照れるなー」

マスターはニコニコしながら何か閃いたように・・・
「それなら、今度は僕からの提案。結婚式の後、ここで披露宴をしよう。出来るだけ二人の関係者集めて。気軽に来てもらってさ。デリバリー頼んでさ、花いっぱい飾ってさ、楽しいパーティにしよう。そして普通の披露宴とは違って、櫻井と朋美ちゃんかみんなをもてなすんだ。どう?」

「嬉しいです。私も呼びたい人います。友田会計事務所の方々、そしていろいろ心配してくれた市役所の元上司、私を育ててくれた施設の方。それだけだけど、呼びたい。報告したい。」

「ああ、いいね、みんな喜んでくれるよ。朋美、明日にでも役所行って入籍しよう。そしてその帰りにその元上司の方とも会って、報告しようよ。」

「壮ったら・・・ありがとう。」
私は嬉しさのあまり泣き出した。

壮は、そんな私をギュっと抱きしめてくれた。

「では決まりね。朋美さん、明日入籍の後ウエディングの仮縫いよ。」

「へっ?」

「だって私元々は洋服のデザイナーだから。もうある程度出来てるの。だから着て頂戴。それにこれがデザイナーとしての最後の仕事。最後がウエディングドレスなんて最高よ。」

「まったくお袋ったら勝手に・・・」

「でも嬉しいです。ありがとうございます。お母様。」

「いいのよー、それぐらいさせて頂戴。壮は・・・何着る? ・・・なんでもいいか?」

「はぁ?」

                                  End.

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