愛は手から零れ落ちる 2nd.
マスターは10分位で来てくれた。
エントランスに誰もいないことを確認して、マスターはエントランスから私の携帯に電話をくれ、その後で部屋のインターフォンを鳴らしてくれた。
「朋美ちゃん、大丈夫?」
「マスター、すみません。」
「ここに来る道すがら、警察にも連絡したからもうすぐ来ると思う。それが終わったらここを出よう。その準備をして。」
「えっ? 私もどこかに・・・でもどこに?」
「僕の奥さんのとこ。」
「えっ? マスターって結婚していたのですか?」
「うん。実はね、別居中なんだ。」
「別居? それなのに、奥様のところに私が行って大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。あのね、うちの奥さん元警察官なの。子供が2人出来て今は無職。そして彼女のお母さんが痴呆だから今は彼女の実家で暮らしている。強いし、僕なんかと居るより安心だ。」
「でも、なんか・・・本当に大丈夫なんですか?」
「うちの奥さん、朋美ちゃんのこと知ってるよ。朋美ちゃんを雇って初めの頃正直疑われた。でもちゃんと話したらわかってくれたし、今回の事件のこともさっき話したから大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。でもお店は・・・櫻井君も私も居ないと・・・」
「あー、丁度いいから1週間休む。ちょっと直したいところあるから、そうするよ。心配しなくていいよ。」
「マスター・・・」
マスターの愛をめいっぱい感じた。
警察官は男女2人で来てくれて、事情を聴かれた。
そしてマンションの管理事務所で防犯カメラの映像を確認して、警官は吉川の写真を持ち帰った。