無口な彼の素顔〜職人技に隠された秘密〜

プロローグ

「お疲れ様です！」

　元気に現場に現れたのは、リフォームやリノベーションを行なう会社『住まいリィ』の島田優だ。

「おう、優ちゃん今日も元気だね」
「はい！元気だけが取り柄なので」

　いつでも一生懸命な優は、父親世代の大工達から可愛がられている。

　だが、今日の現場には見たことのない若い大工がひとり……。こちらを見ることなく黙々と仕事をしている。

「お疲れ様です〜」

　恐る恐る声を掛けてみるが、チラッと優に視線を向けて、ほんの少し頭が動いた程度の反応だけで、仕事を続けている。

「優ちゃんすまんな。彼は、今日一人足りなくて急遽来てもらったんだ」
「そうなんですね。ありがとうございます。よろしくお願いします！」

　優の言葉に、今度はしっかり頭を下げて反応してくれた。

　今日の現場は、大橋建設が施工し築二十年ほど経ったマンションの一室を全面リノベーションをしている。