無口な彼の素顔〜職人技に隠された秘密〜

　自意識過剰といわれるかもしれないが、秘書課の女性全員から下心を感じる。

　大橋建設の秘書課に勤務するには、かなりの難関だと言われている。秘書課に配属されることが大橋建設の女性の中ではステイタスなのだが、配属された瞬間からみんなプライドの高い女性になってしまう。

　選ばれし者として自信。それを仕事に活かしてくれたらいいが、なぜかみんな間違った方向に行ってしまうのだ。

　現に目の前の女性も、用事が終わってもなかなか退出しようとしない。

「他に何か？」
「いえ。あの〜」
「何だ？」
「専務、今日のご予定は？」
「はあ？君に伝える必要があるか？室長には伝えている」

　もちろん仕事の予定を聞かれたのではないことはわかっているが、あえて気づいていない振りをし、それ以上聞けない雰囲気に持っていく。

「いえ……。失礼しました」

　これ以上は無理だと気づき退散していく。