捨てられる前に、最後にひとつよろしくて?


 やりたいようにやって、公爵家の勤めを果たす作業はしっかりこなす事を繰り返しても、私の悪役令嬢っという噂は消えることはなくて定着してしまったのも今はどうでもいい。

 裏では評判の良い作家として私は物語を綴り、婚約者としての務めを果たしながらひっそり殿下を支えていこうとそう思っていた。


「僕と……君の婚約を破棄させてほしい」


 殿下の口から、その言葉を聞くまでは。

 悪役令嬢の私に遂に嫌気が差したんだと直ぐに理解出来たし、今までの行いが全て帰って来たと思えば当然の報いだろう。

 でも納得はいってない。

 殿下の隣が相応しいのはもちろんカイであって、他の女が奪っていいものではないのに。

 でもそれを口にした所で、きっと私は頭がおかしくなったと牢屋に入れられるか、教会に連行されて神の教えを説く人生が一生続くんだろう。

 ……全て、私の我が儘と妄想が作り出した世界なんだから無理もない。

 でも私は悪役令嬢だ。

 最後の最後まで、自分の婚約者としての立ち位置を使わないのは勿体ない。

 そう直ぐに判断したのは、作家としての考えなのか何なのか。

 鍵を閉めたこの二人だけの部屋で、私はこれまでずっと書けなかった作風のために人肌脱ぐ。



 いや――脱がせる。



 私の最後の願いを叶えるために。


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