捨てられる前に、最後にひとつよろしくて?
今はしっかり見ないといけないのにっ!
極上の参考資料を前に、目を背けてしまったらもったいないのに!!
今までずっと作品内で表現することが出来ずにいた、男性の細やかな体躯。
それを目の当たりにして、想像力が掻き立てられるとそう思っていた。
きっと書けなかった描写もスムーズに描けて、満足のいく作品が作れるようになると思っていたけど、現実はそうはいかない。
何故かこんな殿下のお姿を他の人に見せたくない、自分だけが見めていたいとそう思ってしまう。
熟れた林檎のように耳まで赤く染まった私は、動揺のあまり殿下の着ていたシャツを元通りにしようとボタンを留めようとしても殿下にこうして跨ってしまっていることさえも恥ずかしい。
「ご、ごめんなさいっ――!」
殿下から離れようと、どうにか動き出すけれど体に上手く力が入らずにバランスを崩す。