捨てられる前に、最後にひとつよろしくて?
お陰で友達と呼べる存在は誰一人としていない。
寂しい気持ちは心の奥底にあったけれど、私は確かにやってはいけない行いをしていた、だからしょうがないと自分に言い聞かせた。
「私は二人が並ぶ姿を見ていられれば、それでいい……」
尊い二人が支え合う姿は、国の宝だとそう強く想っていたぐらいだったのだから。
なのに、私を嫌っていてもおかしくない殿下はこんな悪役令嬢の私をいつも気に掛けて下さった。
「君の瞳と同じ色の花を見つけてね。マージュ、どうか受け取ってほしい。僕に何か出来ることがあれば、いつでも遠慮は要らないから言って欲しい。僕は君の味方だからね」
そう言って優しく微笑む殿下を見て、なんだか泣きそうになった。
「あり、がとう……ございます……」
これまでこんなに迷惑をかけてきていたのに、殿下はどうしてここまで優しくしてくれるのか分からない。
貴方の隣が相応しいのはカイであって、私ではない。婚約者とはいえ、ただの政略的なものでしかないのだから。
私に時間を掛けて関わっても、何も生まれない。そう分かっていても、何故か胸が苦しくなるだけになっていた。
知らない感情が自分の中で渦を巻いて、気がつけば殿下を目で追うようになってしまった。