私の隣の席は塩対応な相澤くん。
「そんな彼がぬいぐるみのクレーンゲームで!?」
えへへっ、春爛漫ですね〜。
ぽかぽかいい天気、いい陽気ですぅ。
眠くなってきちゃう。
数学の授業は眠りの魔法の呪文のごとし……。
目がとろん、まぶたが閉じていく。
……やばやば、まずいなあ、寝ちゃいそう。
うとうとしてきたから、景色を見てリフレッシュ!
散り始めた、学校の校庭の桜がすごく綺麗です。
私の教室の窓からよぉく見えるんだよ。
私の隣の席の相澤《あいざわ》くん。
いつも澄まし顔であんまり笑わない。
……学校では。
相澤くん越しに、私ははらはらと風に吹かれて舞い散る鴇色《ときいろ》に美しい桜並木を眺めてる。
「なに、また見てんのかよ?」
「えっ、そりゃあ見るよ?」
「あんた、どさくさに紛れて俺のことも桜と一緒に見てる?」
「みっ、見てないからっ!」
ううん、見てた。
私、桜と相澤くんを一緒に見てた。
バレバレだったか〜!
ご、誤魔化さないと。
「わた、私は相澤くんじゃなくって桜も見てるの!」
「桜《《も》》?」
しまった!
桜もとか言っちゃった。
「相澤くんってさ、自意識過剰だよ」
「へえ〜? 自意識過剰なん? 俺が」
「そ、そうだよ。相澤くんがいくらイケメンで横顔が綺麗で格好いいからって、誰も彼もが君のことをこっそり見てるわけじゃないんだからねっ!」
「ぷぷっ……。あんた、俺のこと褒めてんの? 貶《けな》してんの?」
「ほっ、褒めて……る」
ふーんと言って、相澤くんも窓の外を見た。
肘をついて、大きな手でほっぺを隠した。
私から視線をそらしてそっぽを向く。
……なになに? 相澤くんったらさ、顔、真っ赤じゃん。
照れてるんだあ? 相澤くん。
ちょっ、ちょっと可愛いかも?
「ああ、確かに。咲き始めも良かったけど散り始めた桜はさ、見惚れるぐらいにさらに綺麗だもんな。 」
「えっ? 相澤くん桜と何が綺麗だって? 小さな声でゴニョゴニョ言ってて聞こえなかった」
「なっ、なんでもねえよ! ……お前、うっさいから話しかけんな」
むっかあ!
なによ、コイツっ!
高校2年生になって友達とはクラスが離れちゃってまだ仲良しな子がいない。
なかなか友達が出来ないなあ。
寂しかったから、ただ誰かとお喋りしていたかっただけなのに。
なに、この塩対応はっ!
相澤くん、相変わらず学校では無愛想だなんだから。
そりゃあ私もついつい、学校ではやめろって言われてるのに相澤くんに馴れ馴れしくしちゃったかもだけど。
そんなに迷惑そうにしなくたって良いじゃない?
……けどやっぱり、相澤くんって悔しいぐらい綺麗な横顔してんだよな〜。
美しい桜に負けないぐらい。
🌸
学校から帰ると、私は家の小さな本屋さんでお手伝いをしてる。
相澤くんはうちの本屋さんでアルバイトをしています。
誰にもナイショなんだけど。
相澤くん、クラスメートには知られたくないんだって。なんで?
「休憩時間さ、一緒にそこの雑貨屋行かねえ?」
「えっ? えっ? 一緒に?」
「何度も言わすなよな。俺と一緒に行く? 行かない?」
わあっ。相澤くん、さくらんぼみたいに顔が真っ赤だ。
相澤くん、恥ずかしがりながら誘うとか、その顔に萌えキュンしちゃうかも。
「い、行っても……良いけど」
「じゃ、あとでな」
うち、商店街の外れの方でも、近くに本屋さんがないからかわりと忙しい。
「いらっしゃいませ」
うちのお店はチェーン店じゃなくて町の小さな本屋さん。
売り場は狭いのだけど、たまに他にはない掘り出し物の稀少な本があるらしく目当ての常連さんも多い。
私のおじいちゃんとおばあちゃんが仲良く旅行して、どこからか買い付けてくる外国の本とか、装丁が素敵なんだ。
見たら欲しくなっちゃう。
あっ、もちろん本の内容だって素敵だよ。中身のお話もうっとりするような甘くてキュンキュンな恋愛や可愛い妖精のファンタジーだったりで面白いよ。
私、よくおじいちゃんとおばあちゃんに誕生日にそんな素敵な本をプレゼントしてもらってるんだ。
二人の選ぶ本は面白さを保証します!
「雑貨屋さんで何か見たいのあるの?」
「ああ。咲希お前、明日がさ誕生日だったろ? ……俺が誕生日プレゼントになんか買ってやるよ」
「えっ!? はい? あ、相澤くんが私に誕生日プレゼント〜っ!?」
「しっ、静かにしろよな」
「ああ、ごめんなさい」
……なんと! 相澤くんが私に?
もう、びっくり!
普段学校では塩対応な分、ちょっと無駄にドキドキするじゃないですか〜。
学校じゃ話しかけるなっていうけど、バイト中の相澤くんとはずいぶんお喋りが弾んで楽しい。
「相澤くん、なんで私の誕生日を知ってるの?」
「店長と奥さんが咲希《さき》が誕生日だって盛り上がってたから」
店長と奥さんって私のパパとママのこと。
毎年パパとママは私の誕生日を手作りでケーキを作ったり、部屋の飾り付けしたりして盛大にお祝いしてくれるんだ。
「でも、相澤くん。プレゼントなんて気を遣ってくれなくても良いのに」
「俺だってお前の誕生日を祝いたい」
「えっ?」
照れながら笑った!
わあっ、なんか可愛い!
しかも、しかも! 相澤くん今、私の誕生日を祝いたいって言った〜?
……嬉しいです。
🌸
「で、なんかあったか欲しいモンは?」
「うーん。おねだりするみたいで悪いなあ」
「良いんだよ、お前への誕生日プレゼントなんだから」
休憩時間に相澤くんと私、うちの本屋さんからすぐの雑貨屋さんにやって来た。
「咲希、ないのか? あったのか? ハッキリしろよなあ。……俺、お前の欲しいやつ買ってやるから」
「あったにはあったんだけど……」
「なんだよ遠慮すんなよ。あったなら教えろ」
「相澤くんに言いづらい」
「はあっ? 高いもんなのか?」
「高くなるかも」
「高くなるかも? なんだソレ」
私は躊躇いがちに伝えた。
「入り口にあったクレーンゲームの景品のぬいぐるみ」
そのぬいぐるみは最近ハマってるキャラクターで、漫画家とか小説家のコスプレをしてるお仕事が大好きな犬「ヨムカク犬《けん》」です。
ベレー帽を被り、万年筆やGペンを握り原稿を持っているキュートなわんこ。
「ぬいぐるみ! ああ、あの犬のぬいぐるみな」
「クレーンゲームが下手だと高くなっちゃうし……」
クレーンゲーム限定バージョンのぬいぐるみは耳が垂れてる特別なヨムカク犬。
「あれで良いのか?」
「うんっ! でも良いの?」
「ああ、任せとけ」
相澤くんは颯爽と歩いてクレーンゲームに向かう。
もしかして一回のチャレンジで取れちゃったり……?
「あっ」
「うっ!」
……ぬいぐるみは取れなかった。
「い、一回じゃ皆なかなか取れないよ〜」
「くそうっ、もう一回チャレンジだっ」
必死に向かう相澤くんの顔がすごく真剣で。
私はなんだか嬉しくって笑ってしまった。
「なっ、笑うなよな。……だいたいお前が、……可愛いすぎるから手元が狂うんだよ」
「ふえっ――!?」
相澤くん、ねえねえ!
もしかして今、相澤くんってば私を可愛いって言ってくれたの?
きゃーっ! きゃーっ!
また聞き間違いかと思ったけど、相澤くんの顔は林檎とか夕焼けみたいに真っ赤だった。
「相澤くんってさ、正面からもイケメンだけど横顔はさらに格好いい」
「ゔあっ!? 俺が格好いいとかおだてるな! からかうんじゃねえ、あっ! また落ちた」
相澤くんって学校だとほんと無愛想で。私だけじゃなくって女子全般に塩対応だよね?
いつかチャンスがあったら、それはなぜなのか聞いてみたいな。
うちで会う相澤くんはお年寄りや子供やお客さんにすごく親切なんだ。
高い所の棚の本を取ってあげたり、相談や世間話を延々と聞いてあげたりする。
それに笑顔も素敵なのに。
私、相澤くんともっとお喋りしてみたいって思ってるんだよ?
もっと相澤くんを知りたいよ。
仲良くなりたいなあ。
私と一緒にいたら楽しいかな?
退屈じゃないかな?
「相澤くん、もう良いよ。私のためなんかに」
「ムカつく、諦めねえ。絶対に取るからな」
「あの、良いよもう……。相澤くんのそのお祝いしてくれるっていう気持ちだけで私は嬉しいから。相澤くんのお金だってもったいないし」
「い・や・だ。お前のためにぜってえ取ってやりてえし」
相澤くんがものすごく真剣な眼差しで、クレーンゲームの操作をする。
格好いいな、横顔。
私、相澤くんの横顔を近くで見られるだけでなんか胸が熱くなってきた。
私のために頑張ってくれてるんだ。すごく幸せな気持ち。
「相澤くん、休憩時間終わっちゃうからそろそろ……」
「待てっ、もうちょい」
「あっ!」
「取れたっ。……おっしゃあ、やったぜ!」
はいっと手渡されたぬいぐるみ。
二つも……?
「二つも! ありがとう、相澤くん。……ああ、そうだ」
私は一つを相澤くんの手に渡す。
相澤くんは怪訝な顔をした。
「お揃いで持とうよ」
「いやいや、お揃いでとか恥ずかしいし。咲希、二つともお前のもんにしろ」
「私は二人で持っていたいな。じゃあさあ、お揃いを持つとこまでが誕生日プレゼントじゃだめかな?」
相澤くんの顔がボッと耳まで真っ赤に染まる。
「し、仕方ねえな」
手、手を握られた!
相澤くんがぬいぐるみを持たない方の手で私の手を握る。
「行くぞ。休憩時間が終わるから急ごうぜ」
「……うん」
私と相澤くんがお店を出ると、桜の花びらが急に騒いだ風に吹雪いて舞って二人を包んだ。
……ああ、すごく綺麗だね。
ぽかぽかいい天気、いい陽気ですぅ。
眠くなってきちゃう。
数学の授業は眠りの魔法の呪文のごとし……。
目がとろん、まぶたが閉じていく。
……やばやば、まずいなあ、寝ちゃいそう。
うとうとしてきたから、景色を見てリフレッシュ!
散り始めた、学校の校庭の桜がすごく綺麗です。
私の教室の窓からよぉく見えるんだよ。
私の隣の席の相澤《あいざわ》くん。
いつも澄まし顔であんまり笑わない。
……学校では。
相澤くん越しに、私ははらはらと風に吹かれて舞い散る鴇色《ときいろ》に美しい桜並木を眺めてる。
「なに、また見てんのかよ?」
「えっ、そりゃあ見るよ?」
「あんた、どさくさに紛れて俺のことも桜と一緒に見てる?」
「みっ、見てないからっ!」
ううん、見てた。
私、桜と相澤くんを一緒に見てた。
バレバレだったか〜!
ご、誤魔化さないと。
「わた、私は相澤くんじゃなくって桜も見てるの!」
「桜《《も》》?」
しまった!
桜もとか言っちゃった。
「相澤くんってさ、自意識過剰だよ」
「へえ〜? 自意識過剰なん? 俺が」
「そ、そうだよ。相澤くんがいくらイケメンで横顔が綺麗で格好いいからって、誰も彼もが君のことをこっそり見てるわけじゃないんだからねっ!」
「ぷぷっ……。あんた、俺のこと褒めてんの? 貶《けな》してんの?」
「ほっ、褒めて……る」
ふーんと言って、相澤くんも窓の外を見た。
肘をついて、大きな手でほっぺを隠した。
私から視線をそらしてそっぽを向く。
……なになに? 相澤くんったらさ、顔、真っ赤じゃん。
照れてるんだあ? 相澤くん。
ちょっ、ちょっと可愛いかも?
「ああ、確かに。咲き始めも良かったけど散り始めた桜はさ、見惚れるぐらいにさらに綺麗だもんな。 」
「えっ? 相澤くん桜と何が綺麗だって? 小さな声でゴニョゴニョ言ってて聞こえなかった」
「なっ、なんでもねえよ! ……お前、うっさいから話しかけんな」
むっかあ!
なによ、コイツっ!
高校2年生になって友達とはクラスが離れちゃってまだ仲良しな子がいない。
なかなか友達が出来ないなあ。
寂しかったから、ただ誰かとお喋りしていたかっただけなのに。
なに、この塩対応はっ!
相澤くん、相変わらず学校では無愛想だなんだから。
そりゃあ私もついつい、学校ではやめろって言われてるのに相澤くんに馴れ馴れしくしちゃったかもだけど。
そんなに迷惑そうにしなくたって良いじゃない?
……けどやっぱり、相澤くんって悔しいぐらい綺麗な横顔してんだよな〜。
美しい桜に負けないぐらい。
🌸
学校から帰ると、私は家の小さな本屋さんでお手伝いをしてる。
相澤くんはうちの本屋さんでアルバイトをしています。
誰にもナイショなんだけど。
相澤くん、クラスメートには知られたくないんだって。なんで?
「休憩時間さ、一緒にそこの雑貨屋行かねえ?」
「えっ? えっ? 一緒に?」
「何度も言わすなよな。俺と一緒に行く? 行かない?」
わあっ。相澤くん、さくらんぼみたいに顔が真っ赤だ。
相澤くん、恥ずかしがりながら誘うとか、その顔に萌えキュンしちゃうかも。
「い、行っても……良いけど」
「じゃ、あとでな」
うち、商店街の外れの方でも、近くに本屋さんがないからかわりと忙しい。
「いらっしゃいませ」
うちのお店はチェーン店じゃなくて町の小さな本屋さん。
売り場は狭いのだけど、たまに他にはない掘り出し物の稀少な本があるらしく目当ての常連さんも多い。
私のおじいちゃんとおばあちゃんが仲良く旅行して、どこからか買い付けてくる外国の本とか、装丁が素敵なんだ。
見たら欲しくなっちゃう。
あっ、もちろん本の内容だって素敵だよ。中身のお話もうっとりするような甘くてキュンキュンな恋愛や可愛い妖精のファンタジーだったりで面白いよ。
私、よくおじいちゃんとおばあちゃんに誕生日にそんな素敵な本をプレゼントしてもらってるんだ。
二人の選ぶ本は面白さを保証します!
「雑貨屋さんで何か見たいのあるの?」
「ああ。咲希お前、明日がさ誕生日だったろ? ……俺が誕生日プレゼントになんか買ってやるよ」
「えっ!? はい? あ、相澤くんが私に誕生日プレゼント〜っ!?」
「しっ、静かにしろよな」
「ああ、ごめんなさい」
……なんと! 相澤くんが私に?
もう、びっくり!
普段学校では塩対応な分、ちょっと無駄にドキドキするじゃないですか〜。
学校じゃ話しかけるなっていうけど、バイト中の相澤くんとはずいぶんお喋りが弾んで楽しい。
「相澤くん、なんで私の誕生日を知ってるの?」
「店長と奥さんが咲希《さき》が誕生日だって盛り上がってたから」
店長と奥さんって私のパパとママのこと。
毎年パパとママは私の誕生日を手作りでケーキを作ったり、部屋の飾り付けしたりして盛大にお祝いしてくれるんだ。
「でも、相澤くん。プレゼントなんて気を遣ってくれなくても良いのに」
「俺だってお前の誕生日を祝いたい」
「えっ?」
照れながら笑った!
わあっ、なんか可愛い!
しかも、しかも! 相澤くん今、私の誕生日を祝いたいって言った〜?
……嬉しいです。
🌸
「で、なんかあったか欲しいモンは?」
「うーん。おねだりするみたいで悪いなあ」
「良いんだよ、お前への誕生日プレゼントなんだから」
休憩時間に相澤くんと私、うちの本屋さんからすぐの雑貨屋さんにやって来た。
「咲希、ないのか? あったのか? ハッキリしろよなあ。……俺、お前の欲しいやつ買ってやるから」
「あったにはあったんだけど……」
「なんだよ遠慮すんなよ。あったなら教えろ」
「相澤くんに言いづらい」
「はあっ? 高いもんなのか?」
「高くなるかも」
「高くなるかも? なんだソレ」
私は躊躇いがちに伝えた。
「入り口にあったクレーンゲームの景品のぬいぐるみ」
そのぬいぐるみは最近ハマってるキャラクターで、漫画家とか小説家のコスプレをしてるお仕事が大好きな犬「ヨムカク犬《けん》」です。
ベレー帽を被り、万年筆やGペンを握り原稿を持っているキュートなわんこ。
「ぬいぐるみ! ああ、あの犬のぬいぐるみな」
「クレーンゲームが下手だと高くなっちゃうし……」
クレーンゲーム限定バージョンのぬいぐるみは耳が垂れてる特別なヨムカク犬。
「あれで良いのか?」
「うんっ! でも良いの?」
「ああ、任せとけ」
相澤くんは颯爽と歩いてクレーンゲームに向かう。
もしかして一回のチャレンジで取れちゃったり……?
「あっ」
「うっ!」
……ぬいぐるみは取れなかった。
「い、一回じゃ皆なかなか取れないよ〜」
「くそうっ、もう一回チャレンジだっ」
必死に向かう相澤くんの顔がすごく真剣で。
私はなんだか嬉しくって笑ってしまった。
「なっ、笑うなよな。……だいたいお前が、……可愛いすぎるから手元が狂うんだよ」
「ふえっ――!?」
相澤くん、ねえねえ!
もしかして今、相澤くんってば私を可愛いって言ってくれたの?
きゃーっ! きゃーっ!
また聞き間違いかと思ったけど、相澤くんの顔は林檎とか夕焼けみたいに真っ赤だった。
「相澤くんってさ、正面からもイケメンだけど横顔はさらに格好いい」
「ゔあっ!? 俺が格好いいとかおだてるな! からかうんじゃねえ、あっ! また落ちた」
相澤くんって学校だとほんと無愛想で。私だけじゃなくって女子全般に塩対応だよね?
いつかチャンスがあったら、それはなぜなのか聞いてみたいな。
うちで会う相澤くんはお年寄りや子供やお客さんにすごく親切なんだ。
高い所の棚の本を取ってあげたり、相談や世間話を延々と聞いてあげたりする。
それに笑顔も素敵なのに。
私、相澤くんともっとお喋りしてみたいって思ってるんだよ?
もっと相澤くんを知りたいよ。
仲良くなりたいなあ。
私と一緒にいたら楽しいかな?
退屈じゃないかな?
「相澤くん、もう良いよ。私のためなんかに」
「ムカつく、諦めねえ。絶対に取るからな」
「あの、良いよもう……。相澤くんのそのお祝いしてくれるっていう気持ちだけで私は嬉しいから。相澤くんのお金だってもったいないし」
「い・や・だ。お前のためにぜってえ取ってやりてえし」
相澤くんがものすごく真剣な眼差しで、クレーンゲームの操作をする。
格好いいな、横顔。
私、相澤くんの横顔を近くで見られるだけでなんか胸が熱くなってきた。
私のために頑張ってくれてるんだ。すごく幸せな気持ち。
「相澤くん、休憩時間終わっちゃうからそろそろ……」
「待てっ、もうちょい」
「あっ!」
「取れたっ。……おっしゃあ、やったぜ!」
はいっと手渡されたぬいぐるみ。
二つも……?
「二つも! ありがとう、相澤くん。……ああ、そうだ」
私は一つを相澤くんの手に渡す。
相澤くんは怪訝な顔をした。
「お揃いで持とうよ」
「いやいや、お揃いでとか恥ずかしいし。咲希、二つともお前のもんにしろ」
「私は二人で持っていたいな。じゃあさあ、お揃いを持つとこまでが誕生日プレゼントじゃだめかな?」
相澤くんの顔がボッと耳まで真っ赤に染まる。
「し、仕方ねえな」
手、手を握られた!
相澤くんがぬいぐるみを持たない方の手で私の手を握る。
「行くぞ。休憩時間が終わるから急ごうぜ」
「……うん」
私と相澤くんがお店を出ると、桜の花びらが急に騒いだ風に吹雪いて舞って二人を包んだ。
……ああ、すごく綺麗だね。