【一気読み改訂版】黒煙のレクイエム

第１話

アタシ・こずえは、生まれた時分《とき》からお母さんと呼べる人がいなかった。

…と言うよりも、アタシが生まれた時分《とき》からお母さんがコロコロと変わっていた…と言うた方がいいと思う。

アタシの今のお母さん(38歳・生後４ヶ月の長男生後６ヶ月のお母さんであります)が何人目であるのか全く分からない。

アタシの実母は、1995年11月頃にアタシを出産した直後に重い脳の病気による心不全で亡くなった。

当時、赤ちゃんだったアタシは乳児院に預けられた。

だから、アタシはいい子に育たなかった。

アタシの亡くなった実母は、赤ちゃんだった昭和45年頃に発生した瀬戸内シージャック事件(プリンス乗っ取り事件)が原因で人生が大きく狂った。

実母の父親は、旅客フェリーの船内に猟銃を持って立てこもっていた。

その末に、船内に突入した愛媛県警のＳＡＴの隊員が発砲した鉄砲で射殺《ころ》された。

事件のあと、実母のお母さんは周囲からボロクソに非難されたことを苦に山陽本線《さんようせん》の踏み切りを走行していた回送電車《でんしゃ》に飛び込んで自殺した。

瀬戸内シージャック事件から６ヶ月後に、実母の親類の家の人たちの交友関係が悪いことがあからさまになった。

祖父がやくざの家に出入りを繰り返していた上にバクチを打っていた…

その後、実母の祖父はやくざ稼業の男ともめごとを起こしたあと行方不明になった…

おばふうふは、そのことを苦に心中をした。

その後、実母はあちらこちらにたらい回しにされた。

実母は、学校を休みがちになっていたので親しい友人はひとりもいなかった。

中学卒業から数ヶ月後であった。

実母は、事件を起こしてケーサツに逮捕された。

実母は逮捕されてから数日後にホシャクされたけど、同じあやまちを繰り返して生きてきた。

実父は、実母以上に深刻な問題を抱えていた。

実父の実家の母親が教育熱心であることが原因で、子供の時から自分の力で生きて行くことができない大人になった。

母親の言いなりになって、中高一貫校から一流大学へ進学した。

そして、トップの成績で一流大学を卒業した。

しかし、実父は一流企業に就職できなかったので、安月給の事業所に就職した。

けれど、実父は入社してすぐにやめた。

『事業所を変えろ!!』『オレを○△社に就職させたのは誰や!?』…

実父は、就職のお世話をしてくださったご夫婦に怒鳴りつけた。

そのたびに、実父は事業所を転々とすることを繰り返していたから忍耐力がとぼしい大人になった。

そんな中で実父と実母は結婚したが、その直後に実母が亡くなった。

実母が亡くなった直後、実父はアタシを乳児院に預けた。

新しいお母さんが見つかったらアタシを引き取る→また離婚した→またアタシを施設に預ける→また新しいお母さんが見つかったらアタシを引き取る…

…と言う事の繰り返しが続いた。

だから、アタシの人生は大きく狂った。

そうした積み重なったので、アタシはダメな子になった。

すべては…

2008年６月８日から始まった。