【一気読み改訂版】黒煙のレクイエム
第84話
ところ変わって、あいつの実家にて…
あいつは、11月20日に義兄《おにい》と大ゲンカをしたあげくに家出して行方不明になった。
あいつが行方不明になったので、嫂《おねえ》や義父はコンパイした。
あいつには、友人知人がひとりもいない…
だから、行くところはなかった。
そこへ、虫の知らせを告げる電話のベルが鳴った。
(チリリリリン…チリリリリン…チリリリリン…チリリリリン…ガチャッ…)
嫂《おねえ》は、不安げな表情で電話に出た。
「もしもし…大船渡市の消防本部がうちに何の用でしょうか…かつひこがイキウメ…イキウメ…いきうめ!!」
この日の午前10時過ぎに、大船渡市内《しない》にあるセメント工場内で作業員の男性が生き埋めになった事故が発生した。
事故に巻き込まれたのは、こともあろうに義兄《おにい》だった。
義兄《おにい》は、特大ダンプに積まれていたバラス(コンクリートにまぜる石)に埋まった…
知らせを聞いた嫂《おねえ》は、めまいを起こして倒れた。
(グハッ…ドバー!!)
嫂《おねえ》は、口から大量の血を吐いたあと即死した。
この時、義父が口から大量の血を吐いて亡くなった嫂《おねえ》に声をかけた。
「さよこさん!!さよこさん!!」
ところ変わって、盛川《さかりがわ》の付近にあるセメント工場にて
工場の敷地内には、大船渡市の中央消防署の救助工作車がけたたましいサイレンを鳴らしながら次々と入った。
特大ダンプの運転手は、サクラン状態におちいった。
現場が緊迫している中で、義父が事故現場に到着した。
「かつひこ!!かつひこ!!かつひこ!!」
義父が現場に到着した時、消防隊員たちの怒号と周辺の住民たちの悲痛な叫び声が響いた。
事故発生から4時間後であった。
義兄《おにい》がバラスの山から救助された。
しかし、義兄《おにい》は心肺停止の状態であった。
義兄《おにい》は、岩手県のドクターヘリに乗せられた後、盛岡へ向けて飛び立った。
怒り心頭になった義父は、持っていたナイフで運転手の左肩を斬《き》り裂いた。
「ああ!!」
「オラオドレ!!」
ダンプの運転手は、義父にズタズタに斬《き》り裂かれて殺された。
「思い知ったか!!かつひこのカタキだ!!」
その時に、激怒していた住民のみなさまが『殺せ!!殺せ!!殺せ!!』とシプレキコールをあげた。
このあと、義父は他の作業員さんたちもナイフでズタズタに斬《き》りつけて殺した。
シプレキコールをあげていた住民たちが、事故を起こしたダンプカーと工場の敷地内にある設備をズタズタに壊した。
(ワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワー!!ガシャーン!!ガシャーン!!ガシャーン!!)
義父は、ダンプの運転手と関係ない作業員さんたち少なくとも10人を殺した容疑でケーサツに逮捕された。
住民たちによる大規模な暴動は、夜になってもつづいた。
暴動は、市内の警察署と市の中心部にも拡大した。
市《まち》は、きわめて危険な状況におちいった。
その日の夜9時過ぎであった。
つばきちゃんとアタシはJR仙台駅の近くにあるジャンジャン横丁の居酒屋にいた。
ふたりは、お酒をのみながら身の上話をしていた。
つばきちゃんは、貿易会社を経営していたカレシにだまされた…と言うたあとグスングスンと泣いた。
テーブルの上には、えだまめ・笹かまぼこ・冷やっこ・ポテトフライが並んでいた。
つばきちゃんの話を聞いたアタシは、おどろいた声で言うた。
「おカネがいるって…」
「あのね…まとまったおカネがどうしてもいるのよ…カレを助けたいのよ…」
「カレを助けたい…」
「うん…と言うよりも…カレが犯したあやまちの後始末をするためにいるのよ…塩竈《しおがま》で貿易会社を経営していたけど…大失敗したのよ…その後始末をするためにおカネがいるのよ…」
つばきちゃんは、冷酒を一口のんでからアタシに言うた。
「カレ…2年前に名取にあるビール工場の勤めをやめて、起業したのよ…だけど…カレは…会社の経営のノウハウが全くなかった…アタシ…カレが商業高校を卒業して…松山大学《まつだい》で経営学を学んだ知識を生かして会社を経営したい…と言うた…」
「そのためには、まとまった資本金《カネ》がいる…それで、つばきちゃんはカネを与えたのね。」
「うん。」
「それで、カレはいくらいると言うたの?」
「1000万…」
「1000万…」
「アタシの手持ちには…500万しかなかったのよ…カレは『500万でもいいからユウヅウしてくれ…』と言うた…アタシは…500万を出す気はなかった…だけど、カレはアタシに500万500万500万…って、しつこく言うて来たのよ!!」
「つばきちゃんは、カレに500万渡したのね。」
「うん…500万は、さいたまに新しく完成する予定の分譲マンションを購入するための頭金に取っていたのよ…川崎のソープと西川口のファッションヘルスと鶯谷《うぐいすだに》のデリヘル店で働いて貯めて…やっとの思いで貯めた500万よ…頭金はらったら、後は月々の分割払いで分譲マンションを買おうと思ってたのよ…ところが、カレはアタシに『500万ユウヅウしてくれ…500万があれば資本金ができる…オレ…一生懸命にがんばって10倍以上増やす…もうかったら500万を倍にして返すけん…』しつこく言うたのよ…だから…覚え書きをつけて500万を貸したのよ…」
「500万は、現金で払ったの?」
「500万は…約束手形で渡した。」
「約束手形…」
「そのおカネが…今も返ってないのよ…」
「その上に…」
「言わなくてもわかるでしょ!!」
つばきちゃんは、にぎりこぶしを作ってテーブルをドスーン!!と叩いた後、タンブラに入っている冷酒を一気にのみほした。
その後、泣きそうな声でアタシに言うた。
「アタシ…ろくでなしのカレの借金を背負わされた…」
「カレの借金を背負わされた!?」
「アタシね…7000万の借金を…押し付けられたのよ…7000万の借金を返すために大金がいるのよ…」
「7000万円…つばきちゃん…あんた払えるの!?」
「あのねこずえちゃん…アタシ…カレの借金を返すのイヤなのよ…だけどね…債権者《ヤクザ》がアタシに『カレシの借金は恋人であるあんたが払うのだよ…』と凄まれたのよ…どうすることもできない…松山大学《まつだい》で経営学を学んだと言うのは大ウソで…本当は高校中退で、無資格無特技…ノミウツカウしか知らないクソバカなのよ!!」
「500万円は…ノミウツカウに使われたおカネだった…」
「言わなくてもわかるでしょ!!」
「サイアクね…それじゃ…例の約束手形はどうなったのよ?」
「カレがヤミに流した…もうだめよ…あいつはヤクザの事務所に出入りしてバクチをしていた…組長と酒を飲んでいた…そのあげくに…」
「そのあげくに…」
「カレ…きのう…組長の女《レコ》をうばった…上納金《くみのゼニ》を盗んでトンズラした…」
「ドサイテーね!!」
「アイツは近い将来、コンクリ詰めにされて名取川《かこう》にドラム缶ごとドボーンかチャカでドタマぶち抜かれるわよ…アイツは殺されてもかまんけど、問題はアタシが背負った借金よ…こずえちゃんお願い…助けて…」
「そうね…」
アタシはこの時、あいつらが亡くなった時におりる1億8000万円の保険金の証書を持っていた。
その中から、義兄《おにい》の保険金の請求に必要な証書をつばきちゃんに渡すことを決めた。
そして、翌朝…
アタシは、つばきちゃんを部屋に呼び出した。
アタシは、つばきちゃんに義兄《おにい》の生命保険の証書を出した後、つらい声で言うた。
「つばきちゃん…うちの義兄《おにい》が…セメント工場で作業中に労災事故で亡くなったの…これは、生命保険の証書よ…受取人の欄につばきちゃんの名前を書いて…連休明けになったら保険屋さんにそれ持って行きなさい…1億8000万円がおりるわよ…」
「こずえちゃん、いいの?」
アタシは、ものすごく怒った声でつばきちゃんに言うた。
「つばきちゃん!!ほんとうはこんなことしたくなかったのよ!!つばきちゃんのためにアタシが犠牲《コースト》になった…と言うことに気がついてよ!!」
「こずえちゃん…」
「とにかく、つばきちゃんは保険金の受取人の欄に名前を書いて、連休明けになったら保険屋さんに行くのよ…その時は、かつひこに暴力をふるわれて大ケガを負ったから当面の生活費がいると言いなさいよ!!」
アタシがものすごく怒った声で言うたので、つばきちゃんは泣きそうな声で『分かった…』と答えた。
その後、つばきちゃんは生命保険の証書の保険金の受取人の欄にショメイナツインした。
「こずえちゃん…ありがとう…あの…きちんとおカネは…返すから…」
「いいのよ…それよりも連休明けになったら保険屋さんに行くのよ!!」
「うん…分かった…」
つばきちゃんは、生命保険の証書をバッグの中にしまった後、部屋から出た。
しかし、アタシは義兄《おにい》の生命保険の証書をつばきちゃんに与えたことが原因でめんどうなもめごとに巻きこまれてしまうのであった。
あいつは、11月20日に義兄《おにい》と大ゲンカをしたあげくに家出して行方不明になった。
あいつが行方不明になったので、嫂《おねえ》や義父はコンパイした。
あいつには、友人知人がひとりもいない…
だから、行くところはなかった。
そこへ、虫の知らせを告げる電話のベルが鳴った。
(チリリリリン…チリリリリン…チリリリリン…チリリリリン…ガチャッ…)
嫂《おねえ》は、不安げな表情で電話に出た。
「もしもし…大船渡市の消防本部がうちに何の用でしょうか…かつひこがイキウメ…イキウメ…いきうめ!!」
この日の午前10時過ぎに、大船渡市内《しない》にあるセメント工場内で作業員の男性が生き埋めになった事故が発生した。
事故に巻き込まれたのは、こともあろうに義兄《おにい》だった。
義兄《おにい》は、特大ダンプに積まれていたバラス(コンクリートにまぜる石)に埋まった…
知らせを聞いた嫂《おねえ》は、めまいを起こして倒れた。
(グハッ…ドバー!!)
嫂《おねえ》は、口から大量の血を吐いたあと即死した。
この時、義父が口から大量の血を吐いて亡くなった嫂《おねえ》に声をかけた。
「さよこさん!!さよこさん!!」
ところ変わって、盛川《さかりがわ》の付近にあるセメント工場にて
工場の敷地内には、大船渡市の中央消防署の救助工作車がけたたましいサイレンを鳴らしながら次々と入った。
特大ダンプの運転手は、サクラン状態におちいった。
現場が緊迫している中で、義父が事故現場に到着した。
「かつひこ!!かつひこ!!かつひこ!!」
義父が現場に到着した時、消防隊員たちの怒号と周辺の住民たちの悲痛な叫び声が響いた。
事故発生から4時間後であった。
義兄《おにい》がバラスの山から救助された。
しかし、義兄《おにい》は心肺停止の状態であった。
義兄《おにい》は、岩手県のドクターヘリに乗せられた後、盛岡へ向けて飛び立った。
怒り心頭になった義父は、持っていたナイフで運転手の左肩を斬《き》り裂いた。
「ああ!!」
「オラオドレ!!」
ダンプの運転手は、義父にズタズタに斬《き》り裂かれて殺された。
「思い知ったか!!かつひこのカタキだ!!」
その時に、激怒していた住民のみなさまが『殺せ!!殺せ!!殺せ!!』とシプレキコールをあげた。
このあと、義父は他の作業員さんたちもナイフでズタズタに斬《き》りつけて殺した。
シプレキコールをあげていた住民たちが、事故を起こしたダンプカーと工場の敷地内にある設備をズタズタに壊した。
(ワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワー!!ガシャーン!!ガシャーン!!ガシャーン!!)
義父は、ダンプの運転手と関係ない作業員さんたち少なくとも10人を殺した容疑でケーサツに逮捕された。
住民たちによる大規模な暴動は、夜になってもつづいた。
暴動は、市内の警察署と市の中心部にも拡大した。
市《まち》は、きわめて危険な状況におちいった。
その日の夜9時過ぎであった。
つばきちゃんとアタシはJR仙台駅の近くにあるジャンジャン横丁の居酒屋にいた。
ふたりは、お酒をのみながら身の上話をしていた。
つばきちゃんは、貿易会社を経営していたカレシにだまされた…と言うたあとグスングスンと泣いた。
テーブルの上には、えだまめ・笹かまぼこ・冷やっこ・ポテトフライが並んでいた。
つばきちゃんの話を聞いたアタシは、おどろいた声で言うた。
「おカネがいるって…」
「あのね…まとまったおカネがどうしてもいるのよ…カレを助けたいのよ…」
「カレを助けたい…」
「うん…と言うよりも…カレが犯したあやまちの後始末をするためにいるのよ…塩竈《しおがま》で貿易会社を経営していたけど…大失敗したのよ…その後始末をするためにおカネがいるのよ…」
つばきちゃんは、冷酒を一口のんでからアタシに言うた。
「カレ…2年前に名取にあるビール工場の勤めをやめて、起業したのよ…だけど…カレは…会社の経営のノウハウが全くなかった…アタシ…カレが商業高校を卒業して…松山大学《まつだい》で経営学を学んだ知識を生かして会社を経営したい…と言うた…」
「そのためには、まとまった資本金《カネ》がいる…それで、つばきちゃんはカネを与えたのね。」
「うん。」
「それで、カレはいくらいると言うたの?」
「1000万…」
「1000万…」
「アタシの手持ちには…500万しかなかったのよ…カレは『500万でもいいからユウヅウしてくれ…』と言うた…アタシは…500万を出す気はなかった…だけど、カレはアタシに500万500万500万…って、しつこく言うて来たのよ!!」
「つばきちゃんは、カレに500万渡したのね。」
「うん…500万は、さいたまに新しく完成する予定の分譲マンションを購入するための頭金に取っていたのよ…川崎のソープと西川口のファッションヘルスと鶯谷《うぐいすだに》のデリヘル店で働いて貯めて…やっとの思いで貯めた500万よ…頭金はらったら、後は月々の分割払いで分譲マンションを買おうと思ってたのよ…ところが、カレはアタシに『500万ユウヅウしてくれ…500万があれば資本金ができる…オレ…一生懸命にがんばって10倍以上増やす…もうかったら500万を倍にして返すけん…』しつこく言うたのよ…だから…覚え書きをつけて500万を貸したのよ…」
「500万は、現金で払ったの?」
「500万は…約束手形で渡した。」
「約束手形…」
「そのおカネが…今も返ってないのよ…」
「その上に…」
「言わなくてもわかるでしょ!!」
つばきちゃんは、にぎりこぶしを作ってテーブルをドスーン!!と叩いた後、タンブラに入っている冷酒を一気にのみほした。
その後、泣きそうな声でアタシに言うた。
「アタシ…ろくでなしのカレの借金を背負わされた…」
「カレの借金を背負わされた!?」
「アタシね…7000万の借金を…押し付けられたのよ…7000万の借金を返すために大金がいるのよ…」
「7000万円…つばきちゃん…あんた払えるの!?」
「あのねこずえちゃん…アタシ…カレの借金を返すのイヤなのよ…だけどね…債権者《ヤクザ》がアタシに『カレシの借金は恋人であるあんたが払うのだよ…』と凄まれたのよ…どうすることもできない…松山大学《まつだい》で経営学を学んだと言うのは大ウソで…本当は高校中退で、無資格無特技…ノミウツカウしか知らないクソバカなのよ!!」
「500万円は…ノミウツカウに使われたおカネだった…」
「言わなくてもわかるでしょ!!」
「サイアクね…それじゃ…例の約束手形はどうなったのよ?」
「カレがヤミに流した…もうだめよ…あいつはヤクザの事務所に出入りしてバクチをしていた…組長と酒を飲んでいた…そのあげくに…」
「そのあげくに…」
「カレ…きのう…組長の女《レコ》をうばった…上納金《くみのゼニ》を盗んでトンズラした…」
「ドサイテーね!!」
「アイツは近い将来、コンクリ詰めにされて名取川《かこう》にドラム缶ごとドボーンかチャカでドタマぶち抜かれるわよ…アイツは殺されてもかまんけど、問題はアタシが背負った借金よ…こずえちゃんお願い…助けて…」
「そうね…」
アタシはこの時、あいつらが亡くなった時におりる1億8000万円の保険金の証書を持っていた。
その中から、義兄《おにい》の保険金の請求に必要な証書をつばきちゃんに渡すことを決めた。
そして、翌朝…
アタシは、つばきちゃんを部屋に呼び出した。
アタシは、つばきちゃんに義兄《おにい》の生命保険の証書を出した後、つらい声で言うた。
「つばきちゃん…うちの義兄《おにい》が…セメント工場で作業中に労災事故で亡くなったの…これは、生命保険の証書よ…受取人の欄につばきちゃんの名前を書いて…連休明けになったら保険屋さんにそれ持って行きなさい…1億8000万円がおりるわよ…」
「こずえちゃん、いいの?」
アタシは、ものすごく怒った声でつばきちゃんに言うた。
「つばきちゃん!!ほんとうはこんなことしたくなかったのよ!!つばきちゃんのためにアタシが犠牲《コースト》になった…と言うことに気がついてよ!!」
「こずえちゃん…」
「とにかく、つばきちゃんは保険金の受取人の欄に名前を書いて、連休明けになったら保険屋さんに行くのよ…その時は、かつひこに暴力をふるわれて大ケガを負ったから当面の生活費がいると言いなさいよ!!」
アタシがものすごく怒った声で言うたので、つばきちゃんは泣きそうな声で『分かった…』と答えた。
その後、つばきちゃんは生命保険の証書の保険金の受取人の欄にショメイナツインした。
「こずえちゃん…ありがとう…あの…きちんとおカネは…返すから…」
「いいのよ…それよりも連休明けになったら保険屋さんに行くのよ!!」
「うん…分かった…」
つばきちゃんは、生命保険の証書をバッグの中にしまった後、部屋から出た。
しかし、アタシは義兄《おにい》の生命保険の証書をつばきちゃんに与えたことが原因でめんどうなもめごとに巻きこまれてしまうのであった。