【一気読み改訂版】黒煙のレクイエム
第90話
時は、夕方5時過ぎであった。

アタシは、上野公園の不忍池《しのばすのいけ》の付近にあるベンチにひとりぼっちで座って、考え事をしていた。

空は、真っ赤に染まっていた。

スーツ姿のサラリーマンたちやOLさんたちがつかれた表情でJR上野駅に歩いて向かっていた。

アタシは、夕暮れの空を見つめながらこうつぶやいた。

アタシは…

何のために再婚したのかな…

アタシはこれで…

何回リコンしたのかな…

そんなことを思えば思うほど、アタシは悲しくなった。

その日の夜のことであった。

アタシは、今夜の寝るところを探すためにアメ横の通りからガードの向こう側へ向かった。

JR山手線の高架橋《こうか》をくぐったアタシは、今夜の宿を探し回った。

深夜11時半頃であった。

アタシは、JR御徒町駅《おかちまちえき》から西へ100メートル先にあるカプセルホテルにいた。

ベッドで横になっているアタシは、ギャラクシー(スマホ)のグーグルプレイミュージックで歌を聴きながら考え事をしていた。

イヤホンから八代亜紀さんの歌で『愛の終着駅』が流れていた。

仙台で殺人事件を犯したつばきちゃんは、あす殺人事件で起訴されるようだ…

あの時、アタシはあれでよかったのか…

アタシに怒鳴られたつばきちゃんはビービービービー泣きまくっていたけど、アタシはあれでよかったと思っている…

ああでもしなければ…

アタシは…

つばきちゃんにカネのムシンをされ続ける恐れがあった…

アタシはあれでよかった…

あれでよかったのよ…

この日、アタシは一睡もせずにひと晩じゅう考え事をした。
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