クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
「ごめん、遅くなって。
クラスの女子と鉢合わせそうだったから、タイミング調整してた」
「……」
「咲玖?」
「――あっ、ごめん!嬉しくて…っ。
やっと会えたから……」
今日一日中ずっと、蒼永に会いたくて仕方なかった。
もちろんすごく楽しかったんだけど、蒼永に会えなくて寂しくて。
「俺も咲玖に会いたかったよ」
「うん…っ」
ギュッてハグされて、じんわりと幸せな気持ちに満たされる。
何故かわからないけど、ちょっと泣きそうになってしまった。
なるべく人目につかない、奥の方にある階段下に移動する。
消灯前だけど先生に見つかっても気まずいし、なんかちょっとしたスリルを味わってる。
「まあ少しくらい誰かに見られても平気だと思うけど。他にも同じような奴ら見かけたし」
「ほんとにカップル多いよね〜」
明日は午後から二人で二条城の方に行くことになってる。
あと下鴨神社にも行きたいんだ!
「永美里さんのために出産御守り買わなきゃ」
「そうだね」
「蒼永は今日どこにいたの?」
「住江の案内で京都駅周辺色々見た。伏見稲荷も行ったよ」
「あー!私たちは今回行けなかったんだよねぇ」
京都も広いし見るところが沢山すぎて、三日間だとなかなか回り切らない。
そんな風に話してたら、あっという間に消灯時間が近くなってしまった。
「そろそろ戻らないと」
「そうだね…っ」
まだ一緒にいたいなぁ……。
「そんな顔されると返したくなくなるんだけど」
「だって……」
明らかに寂しそうにする私の唇に、軽く触れるだけのキスが落とされる。
「――おやすみ」
その後ぼんやりしながら部屋に戻った私は、翠夏ちゃんと朱莉ちゃんに散々「幸せオーラダダ漏れ!」と言われたけど、それになんて返したか覚えてなかった。