クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
「多分パパが何とかしてくれるから、大丈夫だよ蒼永」
「……ありがと」
蒼永は私に寄りかかって頭を寄せた。
「じいちゃん、ほとんど風邪も引いたことなかったし、母さんも動揺してたみたいで…俺に電話かけてきたみたい」
「蒼永……」
こんなに不安そうな蒼永を見るのは初めてで、思わずぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫だよ……!」
「うん……」
私には大丈夫って言ってあげることしかできないけど、大丈夫じゃなかったら?
妊娠中の永美里さんには精神的負担がかかるだろうし、青人さんはお仕事もあるしすぐに駆け付けられなかったら――……
「蒼永!行って!!」
「え……」
「行きたいんでしょ?」
「……っ」
本当は今すぐ会いに行きたいって思ってるの、わかるよ。
だって、ずっと一緒にいるんだもん。
「でも、咲玖を一人にするわけには…」
「大丈夫、翠夏ちゃんたちに連絡して合流させてもらうから!だから、心配しないで」
「咲玖…ごめん」
蒼永は強く私を抱きしめた。その手は少し震えているような気がした。
「ありがとう」
「気をつけてね……」
私たちは神社を出て、先生に電話で事情を話し、駅に向かった。
荷物を取りに一度ホテルに戻ることになる。
「後で連絡する」ともう一度抱きしめて、蒼永は足速に改札をくぐり抜けて行った。
こうして、二人だけの修学旅行は終わってしまった。