クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
咲玖はちょっと戸惑いつつ、「私で良ければ」と了承してくれた。
それからうちに泊まり込みで色々やってくれてるけど。
「咲玖、無理してない?」
「大丈夫だよ。結構楽しんでやってるよ!
多すぎるくらいのお小遣いもらってるし。
それにね…奥さんになったみたいで、嬉しい」
「……。」
――咲玖はすごいな。
好きだと思った次の瞬間に、もっと好きにさせてくる。
「じゃ、じゃあ私行くねっ」
照れ臭そうに立ち去ろうとする咲玖の腕を掴み、一番近くの部屋に連れ込んで壁に押し付ける。
「ん……っ」
唇で唇をこじ開け、舌で舌を絡めとる。
突然のキスにも応えようとしてくれる咲玖がいじらしくて愛おしい。
ゆっくり唇を離すと、名残惜しそうに白い糸が垂れ下がる。
「はあ……っ」
熱い吐息を漏らす咲玖の色香に眩み、もう一度唇を重ねようとした。
「蒼永、誰か来るかも…」
「来ないよ」
「でも……」
「――蒼永ー!咲玖ちゃーん!」
あと数ミリというところで、母親の声で時が止まる。
「お昼できたわよ〜!」
……残念だけど、ここまでか。
急に我に返ったのか、金魚みたいに口をパクパクさせる咲玖の頬に軽く触れるだけのキスを落とす。
「行こっか」
顔も金魚みたいに真っ赤な咲玖の手を引き、部屋から出た。