クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
「あら二人とも何してたの?」
「いや別に」
「咲玖ちゃん、顔が真っ赤だけど…」
「あっ暑さのせいかも……!」
必死で誤魔化す姿がかわいくて、思わず笑ったらめちゃくちゃ睨まれた。
でもかわいい。
その日のお昼は素麺だった。
「咲玖ちゃん、今夜はおじいちゃん、おばあちゃんと一緒なのよね?」
「そうなんです〜。横浜のクルージングディナーに行ってきます」
「いいわねぇ。楽しんで来てね」
「はい!…蒼永も行かない?」
「俺はいい。たまには祖父母孝行してきなよ」
「わかった〜」
何着ていこうかなと楽しそうにしている咲玖がかわいいけど、実は咲玖のおじいさん、おばあさんに頼んで咲玖を連れ出してもらうためのものだ。
……向こうが何か動いてくるまで、咲玖には黙っていることにした。
「じゃあ、行ってきまーす!」
水色のワンピースに着替え、髪も綺麗に巻いてかわいい咲玖を行かせるのは嫌だけど、祖父母と来ている孫娘をナンパする輩はいないだろうと思いたい。
「気をつけてね」
「うん!」
複雑な気持ちで咲玖を見送る。
でも、まだこの話を咲玖に聞かせるわけにはいかないから。
俺はじいちゃんたちが待つ大広間に入った。
「……揃ったな」
部屋に集まったのはじいちゃん、うちの両親、そして咲玖の両親とじいちゃんの秘書。
秘書はじいちゃんから少し離れたところで控えている。
「皆に話しておかねばならないことがある」