クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
神妙な面持ちでじいちゃんが語ったのは、今回の手術の件。
この手術のことは家族、白凪家、そして秘書の茶山さんにしか伝えられないことになっている。
「しかし、病院側が変に気を回したせいで虹ヶ崎の連中に知られてしまった」
「虹ヶ崎って、あの虹ヶ崎財閥ですか?」
舞子さんが尋ねると、じいちゃんは頷く。
「あの虹ヶ崎財閥と繋がりが?」
「そうか、舞子さんは知らなかったか。実はな…」
そもそも虹ヶ崎財閥というのは、病院や福祉施設など手広く経営している国内でも指折りの財閥だ。
簡単に言うとその虹ヶ崎とうちは、親戚同士になる。
じいちゃんの実の姉が虹ヶ崎家に嫁いでおり、現在は虹ヶ崎財閥会長夫人なのだ。
俺にとっては大伯母に当たるわけだけど、俺はこの人がものすごく苦手。
良家に生まれ、良家に嫁ぎ、欲しいものを全て手に入れてきた大伯母。
実質虹ヶ崎財閥を動かしているのは、大伯母であると囁かれる程の人が唯一手に入れられなかったもの。
それが、九竜家の跡取りだった。
「…青人が跡取りを降りた時、姉は自分の子を跡取りにしたらどうかと申し出てきた。
蒼永が生まれてその話は消えたが。
そもそも姉の思い通りにさせるつもりは毛頭なかったがな」