クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
まあとにかく、これでやっと帰ってくれる。
二人を見送りに向かう途中、ふと結愛が廊下で足を止めた。
「弓の音が聞こえる…!いいなぁ、結愛も弓を引きたくなってきちゃった」
ちょうど弓道場が近くにある。
「おじさま、結愛にも弓を引かせていただけませんか?」
「別に構わんが…」
「ありがとうございます!」
「あら、丁度良いですわ。結愛、貴女の実力を見せておあげなさいな。
きっと九竜家の嫁に相応しいとわかっていただけるでしょう」
「はい!頑張ります!」
……なんか妙なことになったな。
てゆーか、結愛は本当にそれでいいの?
祖母の言いなりになってるけど……。
「蒼永くん、見ててくださいね?」
「……」
いや、案外言いなりってわけでもないのかもしれないな……。
結愛は貸した袴に着替え、弓道場に入った。
弓を持った途端、表情が変わる。
小動物みたいな笑顔は鳴りを潜め、視線は的だけに一点集中していた。
結愛が放った矢は3本ともド真ん中を射抜いた。
確かにこれは、ガチの実力者みたいだな。
「見事ですわ、流石は私の孫ですこと」
「はあ、緊張しちゃいました〜。
蒼永くん、どうですか?」
「どう、って言われても…すごいね」
「結愛、蒼永くんのお嫁さんになれますか?」