クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
じ、と見つめてくる瞳は的に狙いを定める時と同じ瞳をしていた、ような気がした。
「……俺の許嫁は一人だけだから」
「え〜残念!
でも結愛、狙った的は絶対射抜くんです――」
「……。」
* * *
やっと大伯母と結愛を見送り、張り詰めた空気が一気に和らぐ。
「こっちの話を全く聞かんところは昔から何も変わらんな」
「…あの様子では、諦める様子はありませんね」
珍しくじいちゃんと父さんの息が合ってる。
二人とも相当頭を抱えてるみたいだ。
「蒼永、心配しないでね」
「母さん」
「蒼永のことも咲玖ちゃんのことも絶対に守るわ」
……こういう時、歯がゆいなぁと思う。
結局俺はまだ子どもで、守ってもらう立場なのだと突き付けられる。
特に母さんには負担をかけたくないのに。
「…俺は大丈夫」
だけど、その翌日から結愛が道場に訪れるようになった。
弓道の練習をさせて欲しいという申し出に、じいちゃんも断る理由がなく、結愛は毎日のように弓道の練習に訪れる。
正直彼女の弓の実力は本物だし、持ち前のコミュ力で早くも他の門下生たちとは打ち解けていた。
「今日は差し入れを用意したんです。皆さんのお口に合うかわかりませんが、良かったら召し上がってください!」
「えっ!?これ全部結愛ちゃんの手作り!?」
「はい!料理には自信があります!」