クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ


「蒼永くんも是非食べてね!」

「…俺はいい」


極力結愛とは距離を置くようにした。

なのに、三日もすれば弟子たちの間でこんな噂が立つようになる。


「結愛ちゃん、蒼永さんの許嫁なんだってな」
「あんなにかわいくて明るくて料理上手で、弓道もすげー上手いとか理想のお嫁さんすぎるよな」
「おまけに虹ヶ崎財閥のご令嬢だろ?申し分なさすぎるよ」


……なんで結愛が俺の許嫁ってことになってるんだよ。


「でも、蒼永さんって結愛ちゃんにめっちゃ塩対応じゃね?」
「俺らの前だからだろ。二人きりになるとヤバいって、結愛ちゃん言ってたし」
「蒼永さんイケメンだし、手早そう〜」


何がどうなったらそうなるんだよ!
思いっきり否定したかったけど、父さんに止められた。


「今は好きに言わせておけばいい。どーせすぐにわかる嘘だ」

「…っ、でも」


俺が好きなのは咲玖だけだし、咲玖以外と結婚するつもりはない。
万が一咲玖の耳に入ったら……、誤解させたくないし不安にもさせたくない。


「咲玖ちゃんを守るためだ。伯母さんが裏で手を回すかもしれない。
おじいちゃんの手術が終わるまでは耐えてくれ、蒼永」

「……、わかった」


咲玖を守るためだと言われたら、何も言えなかった。


「ごめんな、蒼永…苦労ばかりかけて」


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