クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
「――えっ蒼永!?」
「……。」
無言で結愛に牽制した。
俺の許嫁は咲玖しかいない。
咲玖に手を出したら、絶対に容赦しない――。
「……っ」
多分結愛は察したのだろう。
一瞬唇を噛み締めたけど、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「うふふ、仲良しで羨ましいです〜。結愛、そろそろ帰りますね!」
袴から着替えるために、パタパタと道場の方に戻る結愛。
これで諦めてくれたらいいけど…、まだ油断はしない方がいいか。
とにかく咲玖には指一本手出しはさせない。
「……あ、あの、流石にお家でぎゅーは、ちょっと恥ずかしいんだけど」
当の咲玖は全く気付いてないみたいだけど。
「親戚の子の前も、ちょっと気まずいっていうか…」
「……咲玖は結愛のことどう思う?」
「すごくかわいいよね。あとお家事情?をわかってるから心配してくれてるんだよね。
優しいなぁって思ったよ」
……うん、マジで1ミリも気付いてないんだな。
「咲玖のそういうとこ、好きだよ」
「えっ!?ありがとう?」
「ところで、部屋ならいいってこと?」
「えっ」
ひょいっと咲玖を抱き上げると、軽すぎてびっくりした。
「ちゃんと食べてる?」
「食べてるよ!じゃなくて、なんで!?」
「要するに見られなきゃいいんでしょ」
「えっと…そうだね?
てゆーか、忘れ物取りに来たのはそうなんだけど…」
「うん?」
「……やっぱり会いたくなっちゃって。
我慢できなくてごめんね」
「……つまり、もう我慢しなくていいってこと?」
先に引き金を引いたのは咲玖だからね。
俺もずっと我慢してだいぶ限界だったから。
俺には咲玖しかいないって、しっかり刻み込んであげるから。
急に真っ赤になって慌て出す咲玖がかわいくて、とりあえず頬に触れるだけのキスをした。