クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
「わざわざこっちの校舎まで来るの大変でしょ」
「でも、それは蒼永も同じだよ?」
「移動教室で普通科の校舎は行くし」
「そうなの?」
「でっでも!流石にあたしの用事で九竜くんこさせるわけにはいかないよね!?
咲玖ちゃん、その時はついてきてくれる?」
「もちろんだよ!」
…まあ、それは仕方ないか。
思わず住江を呼べば?って言いそうになったけど、それは咲玖を近づかせたくない俺の都合だし。
多分春日井は、こういうところを直せって言ってるんだろうな…。
「なるべく俺がいる時に来てね」
「うん!連絡するね!」
「…九竜くんって、めっちゃ冷たいのかと思ってたけど、咲玖ちゃんには優しいんだね」
「否定はしない」
「好きな人にだけトクベツ!って感じで素敵〜。
でも、あたしわかるんだぁ」
急に華村は少し立ち上がると、前のめりになって俺の顔を覗き込んできた。
「九竜くんって、実はちゃんと周りにも優しくできる人でしょ?
目ぇ見ればわかるよ〜」
…なんか顔近くない?
「…そう?」
「うんっ。結局優しい人ってみんなに優しいからっ」
「あんまり思ったことないけど」
「そんなことないよ〜。目が優しいもん」
そう言って華村はじーっと見つめてくる。
やっぱり距離が近いのは気のせいじゃない気もする。