クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
散らばったカードを拾って、それが百人一首だと気づく。
あれ、もしかして…
「…住江くんですか?」
「へっ!?」
「あ、いや、かるた部の住江緋色くんかなぁって…」
「そうですけど…なんで?」
「私翠夏ちゃんと友達なんです!」
訝しげに私を見ていた住江くんは、翠夏ちゃんの名前を聞くと「ああ…」と納得した表情になる。
「華村の…」
「翠夏ちゃんから聞いてます、今年から特待生になったんですよね〜」
「まあ…」
「かるたって小学生の時にちょっとやった以来だなぁ。絵札が綺麗ですよね〜。
あ、私この歌が好き」
私が手に取った歌はこれ。
「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の
われても末に逢はむとぞ思ふ」
「川瀬の流れが早いので、岩にせき止められた急流が二つにわかれてもまた一つになるように、貴方と別れてもいつかはきっと逢おうと思う。」
という意味の恋の歌。
「好きな人と別れてもいつかまた会えるって信じてる歌なのかなぁって。」
蒼永が地方留学で九州に行ってしまった直後、学校で百人一首を習ってこの歌と出会ったんだよね。
その当時の自分にすごく響いたというか…。
――あれ?
つまり私、小学生の頃から蒼永のこと好きだったの…?