クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
自分でも気づいてなかった事実に気づいてしまったかもしれないと思い、一人赤面する。
「…この歌で詠まれているのは、離れ離れになった恋人への切なる激情なんだ」
「え?」
「岩にせかるる滝川、は岩に当たって激流に堰き止められたって意味で、会いたいのに引き裂かれた恋人への激しい熱情を表しているんだよ」
「…。」
「それでもまた逢おうと誓った決死の覚悟が感じられる、素晴らしい歌だよね」
そこまで話して住江くんは、急にハッとして顔を赤らめる。
「ごめんっ!!急にペラペラと…!
つまらなかったよね…ごめん」
「――ううんっ!そんなことないよ!
教えてくれてありがとう!!」
私は目から鱗だった。
この歌、もっと切ない感情を詠んだ歌なのかと思ってた。
そんなに激しい恋の歌だったなんて。
「和歌ってすごいね。たった31音にそんな想いを込められるなんて」
「…そ、そうなんだよ!だから和歌は素晴らしいし、奥が深いんだっ!」
興奮気味の住江くんを見て、一目でわかった。
この人、本当に和歌が好きなんだ。
「…あ、またごめん…」
「ううん、教えてくれてありがとう。はい、これ」
私は「せをはやみ」の札を渡す。
「私、B組の白凪咲玖です。よろしくね」
「よ、よろしく…」
「それじゃあまた!」