クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
そう叫ぶと同時に急に蒼永に抱きしめられたかと思えば、突然サッカーボールが飛んできた。
蒼永が守ってくれたから大丈夫だったけど…、ほんとに危なかった。
「ごっ、ごめんなさい!!」
慌てたように飛び出してきたのは、緋色くんだった。
「住江…」
「ごめん…一人で練習してたんだけど、変な方向に蹴っちゃって…怪我なかった?」
「うん、大丈夫。咲玖も平気?」
「うんっ」
「ほんとにごめん…じゃあ、俺はこれで…」
「あっ待って!」
足速に立ち去ろうとする緋色くんを、思わず呼び止めてしまった。
「緋色くん、一人なの?みんなと練習しないの?」
「…そうだけど。てかなんで名前…」
「あっ、ごめんなさい!翠夏ちゃんのが移っちゃった。住江くん」
自分でも全然気づいてなかったや。
いつの間にか自然と緋色くんになってた。
「別に名前でもいいけど…」
「そう?じゃあ緋色くん。みんなとは練習しないの?」
「俺は九竜みたいに望まれて来てないし、どちらかというと足手まといだから。せめて邪魔しないように…と思って」
だから一人で自主練を――?
「それじゃあ。邪魔してごめん」
「あっ、えっと!お互い頑張ろうね!」
緋色くんはびっくりしたような顔をしていたけど、ちょっとだけ会釈して立ち去っていった。