クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ


悔しい、すごく悔しい。
みんなで練習してきたのに。

蒼永にいっぱい教えてもらったのに――…


「咲玖」

「蒼永…」


…ダメだ、今蒼永の顔見たら泣いちゃう。
私は思わず唇を震わせて俯いた。

そんな私の頭を蒼永は優しく撫でてくれた。


「よく頑張ったね」

「…っ」

「咲玖、見てて――絶対勝つから」


そう言い切った蒼永の表情は、ドキッとするくらいカッコよくて――本気なんだとわかった。

空手や剣道の試合前と同じ表情。
勝つと決めた蒼永は、絶対に負けない。



「…ねぇ、頼みがあるんだけど」

「え?」

「俺に全部パス回してくれない?」



――後半戦、男子の試合が開始した。



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