クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
確か長年各道着を発注しているところだな。
まさか住江の実家だったとは。
「そっか、うちのお得意様だったんだ。ごめん、気づかなくて」
「全然」
そんなの普通気にしないと思うし。
「九竜さんは長年お世話になってて、売上が悪い時でも注文してくれて本当に助かってるって言ってたから…いつもありがとう」
「どういたしまして?」
俺が言うべきことではないと思うけど、後でじいちゃんが帰宅したら言っておこう。
あと母さんにも。
それにしても、住江って真面目なんだな。
「…住江くんと結婚したら、呉服屋の嫁ね?」
「ちょっと桃のん!!やめて!!」
後ろでなんかコソコソしてたけど、庭を見るのに夢中な住江には全く聞こえていないようだ。
「住江くんは実家を継ぐの?」
大志が尋ねると、住江は当然のように頷く。
「もちろん」
「じゃあ蒼永くんと一緒だね。跡取りだ」
「あっでも俺は…九竜の家とは違って、細々やってる老舗の呉服屋だから…」
そんな風に謙遜してるけど、住江は実家を継ぐという責任感が既にある。
…言われるがまま跡取りになった俺とは、違うな。