クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ
思い切り緋色くんの方に向かって倒れ込み、思わず緋色くんの制服を掴んでしまった。
つまり、抱きついた形になる。
「ご、ごめんっ」
「……」
すぐに離れようとしたけど――、
「……え?」
自分でも何が起こったのか、一瞬理解できなかった。
私今、緋色くんに抱きしめられてる……?
あまりにも想定外のことが起きていて、体が硬直してしまう。
すぐに振り解かなきゃいけなかったのに。
――ガタン!
突然何かの音が響いて、反射的に離れた。
振り返ると、そこにいたのは
「す、翠夏ちゃん…っ」
「……っ」
翠夏ちゃんは踵を返して駆け出してしまう。
「待って翠夏ちゃん…!!」
なんで私、すぐに……!!
「違うの、翠夏ちゃん!今のは…っ!」
「……。」
「ごめんなさい、私びっくりして…その…っ」
「……謝らないでよ」
翠夏ちゃん――……
「あたし帰るね…」
「待って!!」
「ごめん、今はほっといてほしい……」
「……っ」
苦しそうな表情で目を合わせてくれない翠夏ちゃんに、何も言えなかった。
どうしよう…翠夏ちゃんのこと、傷つけてしまった――……